Bandit Attacking

 ヨコドテから出発したアキとヴィーの乗る列車はダテへ向かう線路から分岐して単線の線路を走り山脈が連なる山々へ向け丈の短い草が生えた草原を駆け抜けていた。使われていないとヨコドテの保安局員は話していたが整備は行き届いており、そこそこの速度で走行することが可能であった。できれば潜んでいるであろう野盗の襲撃を受けずに抜けられればそれで良かったが万が一に備えてヴィーはライフルを片手に列車の屋根へ陣取っていた。


「ヴィー?どう?」

『列車前方、三時から四時の方向から何かが接近しているわ。確認できる?』


 インカムを通じて連絡を取り合い、アキが右斜め前方方向に双眼鏡を向けるやや小高くなった丘から土煙が上がっている。その先頭をうかがえないが土煙の数を考えるとバイクや自動車を多数所有してるようであった。


「姿は見えないけど野盗共の類っぽいね。私も参加する?」

『私のほうで対処できる野盗は対処するけど列車に乗り込もうとしたのは対処してくれれば助かるわ』

「おっけー、任せて!」


 土埃が近づくにつれてその集団の全容が見えてきた。先頭には多数のバイクや自動車が見え、自動車には立派な機関銃が備え付けられいずれも完全武装でとても友好的には見えない。


『距離……おおよそ3000から4000弱、そろそろいいかな?』

「いいけど……当たるの?」

『楽勝楽勝、目をつむってでも当たるわ』


 軽く交わしたのち銃声が一発響く。すると土煙とは異なる黒煙が立ち上っていた。先頭を走っていたバイクが転倒し大破、炎上したのである。


『バイクかしらね。一台はやったけど以前として近づいてきているわ』

「流石。その調子で頼むよー」


  続々と聞こえる発砲音と比例するように立ち上る黒煙の量が増えていくが、迎撃はここまで、トンネルが前方へと見え、峠へと差し掛かったのである。


「ヴィー、そろそろ打ち止め!トンネルに入るわよ!」

『了解、今戻るわ』


 その会話を交わして少し経つと機関車を暗闇が包み込む。無事にトンネルへと突入することができた。







「クソが……手ひどくやられたな」

「バイク部隊は三分の二が破損、装甲を施した自動車部隊も大なり小なりの被害、鴨葱ではありませんでしたな」


 トンネルの出入り口で手ひどくやられた野党の一団が集まっていた。しかし、その数は半分ほどに減っていた。


 バイクに乗っていた者はヴィーによって脳天や身体の一部分を撃ち抜かれて脱落、装甲自動車も前面の防弾ガラスが狙い撃ちされてしまい追跡不可能となってしまったのである。

 

「……おい、この先で線路に合流できるか?」

「……正気ですか?」


 参謀役の男が問いかけるがリーダーの男は断固としてゆずらない。


「あのクソアマ共にやられっぱなしじゃあ癪だ。散々こき扱ったあとで晒してやる」


 そう話すリーダーの男の目は血走っており、見るからに正気を失っているようにも見えていた。


「再び線路と合流することはできましょう。ですかあの列車とかちあえるかは不明ですが……」

「それでもかまわん!いくぞ!」


 使い物にならなくなった防弾ガラスは破り捨て、動かない自動車は乗り捨て、野盗たちは再び列車との追いかけっこを再開した。



 

「お疲れ様、はいタオル」

「ありがと……ふぅ、さっぱりした。だけどアイツらはまだ諦めるようなタチじゃない気がするわ」


 汗をかきながら機関車に戻ってきたヴィーがそう呟く。タオルは一瞬にして土埃などの汚れで黒く染まる。水分補給と軽い栄養補給、弾薬補給を済ませて再び列車の屋根へ戻ろうとする。


「本当にあいつらがまた襲ってくるの?」

「それはわからない。……だけど私の勘はあの野盗共が追いかけてきているような気がするの」

「勘ね……案外馬鹿にできないものね」


 ヴィーが警戒のために列車の屋根へと登るとトンネルの出口が見えてくる。後少しでトンネルを抜けるという時にアキのインカムにヴィーが叫ぶような警告が飛んできた。


『アキ!伏せて!今すぐ!』


 ヴィーの唯ならぬ気配を感じ、慌てて伏せたところ銃弾の雨が機関室を襲った。咄嗟に伏せたため幸いアキは無傷だったものの運転台左側の窓や乗降口の防弾ガラスが砕け散りアキの上へと降り注いだ。


 砕け散った窓から様子を伺うとひび割れた道路の上を野盗共の操る自動車が並走していた。


「わ、私の機関車……」

『悲しんでないで速度を上げて!』

「わかってるよ!」


 なんとかマスコンを目一杯引いて列車の速度向上させるアキ、列車の上から断続的に発砲音が聞こえ、迎撃をしてくれているヴィーであるが死角に入った野盗が機関車に乗り移ろうとしているのを見逃してしまった。


「このクソアマ!列車を止めろ!」

「誰の許可とって私の機関車に乗り込もうとしてんだよ!消えな!」


 乗り込もうとした野盗にアキが気づき機関車の扉を蹴破るとそのまま野盗はふっ飛ばされて道路を転がっていた。その代わりに扉が閉まらなくなってしまったが列車の制御を奪われるのと比べると安い代償であろう。


「これで弁償代タダにしてあげるからね!貴方の命で!」


 何やらカッコつけるが鍵が馬鹿になってしまった扉からまた別の野盗が乗り込んできたが今度は機関車に備え付けてあった手斧で殴りつけてはたき落とした。

 

「だから誰の許可で機関車に乗り込もうとしてんだよ!おととい来やがれ!」

『中々近接銭湯の心得があるじゃない?どう?ポーターズ・ガードになってみない?』


 唐突なスカウトがヴィーから飛んでくるが今はそんな冗談をいいあっている場合ではない。なんとか食い止めているものの、乗り込まれるのは時間の問題といった具合であった。


 数を少し減らしたものの以前として野盗の数は多く、数にまかせてヴィーの銃弾を交わしながら近づき死角へ入ると一気に加速して機関車へと接近していく。


『クソっ……アキ!そっちに一台向かったから気をつけて!』

「りょーかい!……なんとかする!」


 アキも自動小銃を構えてフルオートで迎撃をする。しかし、運転手を狙った射撃は防弾ガラスと金網によって阻まれてしまい横付けされてしまった。


「しまっ……」


 あわや乗り込まれるといったところで自動車がブレーキをかけたかと思えば真下へと消えてった。どうやら鉄橋へと差し掛かり、野盗共の走れそうな道は目の先にあるがとうの昔に橋桁が落ちとても通行できそうには無い。川を渡るという手もあったが水深がどれほどあるかがわからず横断を断念せざるをえない。


 どうにかこうにかしてアキたちの後を追おうとした野盗もいたが列車のみが通過することを前提とした鉄橋なので下に落下、もしくは途中で突っかかり走行不能となるなどして追っていくことはかなわなかった。


 無事……とは言えないが何とか振り切ることができたアキたちではあるものの、銃弾を機関車に浴びせられてしまった。運転台には割れたガラスが飛び散った部品の一部等が散乱しており箒を使って機関車の外へと捨てている。


「はぁ……私の機関車……」

「大丈夫ですかアキ?壊れてしまったものは仕方がありませんが命あっての賜物ですよ」

「仕方がないかぁ……そうだよね。無事にもどれたら損傷した分だけ請求してやるんだから!」

「その心意気いいよ。ついでにちょっと水増しして請求してもバレませんよ。水増しした分で美味しいモノを食べに行きましょう」

「……随分とあくどいこと考えるのね」



 

 

 


 

「クソが……一度ならず二度も俺をコケにしやがって……」

「どうしますか?これ以上近づくと赤い雨が振る汚染地帯に近づきますが……」

「少し黙ってろ!今考えてるところだ!」


 貧乏ゆすりをしながらリーダーの男は少しの時間考え、一つの妙案を思いついた。


「この先、トンネルの出口で線路を爆破するぞ!爆薬は……あるな!よし!やるぞ!」


 本当の最終手段としておきたかったが四の五の言えなくなってしまったのであろう。強硬手段に打って出ることにしたようである。


「急げ!列車の先回りをするんだ!」 





 そんなことを野盗たちが考えている中、アキたちは崖沿いの鉄橋やトンネルをいくつも通りぬけながら野盗達の姿を捜索しながら走行していく。



「ヴィー、どう?見える」

『……今のところは何も待っていた!だけど様子がおかしいわね……』


 ヴィーからの情報をまとめるとこちらを襲撃するような素振りを見せず、どちらかといえば列車を追い越そうと必死になっているようであった。


「一体何をしようとしているんだか……」

『アキ、伊達方面へ抜ける線路を爆破したのが彼らだとしたら……』

「まさかとは思うけどまだ爆薬を持っていて線路を爆破しようとしているってこと!?やばいじゃん!」


 そう気づいたものの、カーブが連続している線形のせいで速度はあまり出ず、どんどんと盗賊団との差が縮まっていくもののトンネルに入っていしまい、野盗たちの足取りが分からなくなっていた。


「どうしよう……」

「爆薬の起爆には時間がかかります。もしかしたら先回りされても通過できる時間があるとは思うけど……正直微妙ですよね」

「……にしてはこのトンネル長いわね……もしかしてこれで峠を、うわっ!?」

「!大丈夫ですかアキ!?」

「大丈夫!それより列車は!?……大丈夫そうね。よかった」

 

 いきなり列車全体が大きく揺さぶられアキはバランスを崩して転倒してしまう。野盗に仕掛けられた爆薬とも考えたがどうも違うようで列車は脱線や転覆することなく走り続けていた。

 やがてトンネルの出口が見えてきたが野盗がいる様子は見られない。しかし安心させていたところをドカン……という可能性もあるため油断できないがそれでも列車は進み、いよいよトンネルの出口で眩しい光に包まれた列車はトンネルから出た。





 「おいどうなっている?」


 トンネルの出口に先回りしていた野盗たちであったが一向に出てくる気配のない列車にしびれを切らしていた。


「おいお前、ちょっと見てこい」


 頭領は隣にいた下っ端の男をトンネルの中に向かわせる。

 トンネルに向かわせてからしばらくすると男が戻ってくるがその男の言葉は信じられないものであった。


「列車なんて何処にもいません!何処かに分岐したかもしれませんがそんな痕跡はトンネルのどこにもありませんでした!」

「そんな馬鹿な話があるか馬鹿野郎!さっき列車はトンネルに突入していったんだぞ!既に通過したっていうのか?ああ!?」


 リーダー格の男が高圧的に問いかけるが野盗は誰ひとり答えない。


「チッ、奴らはもう峠を超えるだろうならば次の狙い目は帰り際だ。生き残ってる奴らをかき集めて山脈を超える場所に配置しておけ。もちろん此処もだ!解ったんならとっとと行動しろ!」


 空に向かって引き金を引くとクモの子を散らすように行動をする。それでも頭領の怒りは収まっていなかった。

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