Yokodote Crossroads

 アキが身体を起こすとまだ日が上っておらず、煌々と焚かれたターミナルの照明が誰もいないプラットホームを照らしていた。眠たい身体を起こし、軽く身支度を寝間着から仕事着に着替えて行き、ヴィーを起こそうと貸し与えた部屋の扉をノックする。


「ヴィー?おはよう。朝ごはん食べよう?」


 しかし、部屋からの反応はない。ドアノブを少しひねってみると鍵はかかっていなかった。


「ヴィー、入るよー?」


 部屋の中に入るアキだが部屋にはヴィーの姿はなく、テーブルの上に『試射に言ってきます』との書き置きがあった。こんな朝早くから試射?とも思ったが現にヴィーの姿は無いため、本当に試射へいったのだろう。


 

「しょーがない。今日は軽く済ませようか……『ただいまー』戻ってきたみたいだしご飯にしましょうか」


 ダイニングに戻ると三丁分のライフルを担いだヴィーが帰ってきていた。


「おかえり」

「ただいまー、ご飯どうする?」

「たべるー!」

 

 と言っても昨日のようにたいそれた料理はできないので今日は袋詰めにされたブロック型栄養食とスープ、ブロック型栄養食で一日の半分のエネルギーと栄養を補えるのだが……いかんせん見た目は本当にただの煉瓦のようである。

 

「……味は美味しいんだけど、見た目がね、まんま煉瓦だからちょっとためらう」

「それもだけど、やっぱり、水が欲しくなってくわ。付け合せにスープを用意しておいて正解、単体だけだとどうにも……ね」


 適当にブロック型栄養食を頬張りながら軽いを終えると係員に出発を告げると後発のコロニー列車や企業列車がいないのですんなりと出発できそうであった。


「ヨコドテまでは一時間か二時間ちょっとでたどり着けるはずだから……問題はその先よね」

「一度ダテまで下って北上していくというルート?他にもルートはあるの?」

「……一応ね、だけどもう使われてないんじゃないかしら?」


 出発信号が青へと変わる。警笛を鳴らしてゆっくりとカワマガリのターミナルを後にし、ヨコドテ・ターミナルへと向かった。











「ヨコドテからモガミに抜ける線路は通行禁止!?!?つい先日まで普通に通行できたじゃないですか!」

「し、しかしだね……土砂崩れで路盤が崩落した上、ポーターの列車が脱線転覆してしまったんだ。復旧には二日か三日最悪一週間ぐらいはかかる予定だ」

「えー……そんなぁ」


 カワマガリを出発して2時間ほど、ようやくヨコドテのターミナルにたどり着いたはいいものの待避線は他のポーターたちの列車で埋め尽くされていた。


 折り返しなどで空いた待避線になんとか滑りこんで贈り物として積まれた2両分の積荷を卸している最中に、事情を聴くとこんな回答が帰ってきたのである。


 この先にある峠を越えようとしたポーターの列車それもブラックキャット・エキスプレスと双璧をなす企業列車の最大手ロイヤル・メールの列車が走行している目の前で線路が爆破されて崩落。

 もちろんロイヤル・メールの列車を運転していた運転士は急ブレーキをかけたものの、間に合わずに線路へぽっかりと空いた穴に列車ごと落下して脱線転覆、このときに線路に備え付けられていた非常停止装置が作動して対向列車だったブラックキャット・エキスプレスの列車は緊急停車し難を逃れたものの大規模に線路が崩落してしまったようである。



「……で?下手人は目星がついてるの?」

「昨日のクボタ=カワマガリの間で行われた野盗の掃討作戦、そこから逃げ出した残党の仕業と保安部は目星をつけています。……ですので復旧には時間がかかるかと」

「残党かぁ……」


 アキは少し考えてみる。野盗共の残党程度であれば速度差で振り切ることが可能、万が一振り切れなくとも撃退は可能であろうと高をくくっている。


「ここから旧都市群の汚染地帯まで伸びる線路がありましたよね?」

「ありますが……あまり使われているされていませんよ?」

「構いません。この路線が一番の近道ですから」


 ヨコドテからダテを経由せずに汚染地帯へと抜けるルート、それは現在ではほとんど使われていない線路を仕様して峠を超えていくというルートであった。


「いいのか?野盗共の残党が残っているのかもしれないが……」

「大丈夫ですよ。カワマガリでライフル銃をもらいましたし、私の列車には優秀なポーターズ・ガードが一人乗車しているので……」

「それは頼もしいですね……ですが気を付けてくださいね。一体何があるかわかりませんので」


 信号が変わり、ゆっくりと発車するアキの操る列車、保安局員や他のポーターたちが見守る中、ダテ方面に抜ける線路……ではなく誰も行かないであろう方向へと列車が進んでいった。



 使われていない線路とヨコダテのコロニーを見下ろせる小高な丘にはいくつか焚き火が焚かれ。見るからに荒くれ者とわかる男どもが暖を取っており中には双眼鏡を片手にヨコダテの方向を見ている者もいた。


 そんな中、ヨコドテ方面を監視していた一人が声を上げた。

 

「おい、こっちに向かってくる列車がいるぞ!」

 

「あん?そんな強行手段を取る列車なんぞどうせ護衛が山ほどのってるんだろ?折角、本線クラスの線路して爆破したってのに全然儲かりそうにないじゃないか」

「まだ脱線した列車の物資を奪った方が旨みがあったんじゃないっすかねー」

 

「違ぇみたいですぜお頭ぁ!あの列車、護衛や自立兵器の類が見えねぇでっせ!」

「なにィ?!貸せ!」


 リーダー格の大男が最初に声を上げた男から双眼鏡をもぎ取るようにして奪い取り覗き込むとそこにはヨコドテのターミナルから発車する機関車とともにその後ろに連なった貨車を引いている列車が映っていた。

 しかもその行き先はダテ方面ではなく、本線から分岐した古い線路へと侵入していく。


 その光景にゆっくりと口角が上がっていく。根城としていた廃墟はクボタとカワマガリの連合軍によって文字通り消失してしまったがようやくツキが回ってきたのである。


「おい!全員に伝えろ!獲物がきたってな!」


 リーダー格の男が声を張り上げると、すぐさま全員に伝わりバイクや自動車にエンジンをかけ銃火器やらをこれでもかと積み込んで出ていく。

 リーダー格と取り巻きの男たちもバイクへと乗り込み小高い丘を一目散に駆け降りる。


 目的は機関車の後ろに積まれている積荷。運んでいるアキ本人ですら中身を知らない積荷であった。

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