Kawamagari Colony
峠を超えるとクボタへと流れ込む大河沿いに線路が伸び、その大河と別の大河が合流する場所、丁度三角州となっている天然の要塞となっている場所にカワマガリ・コロニーが存在していた。
「ポーターズ・パスの提示を」
待避線へ入線するとカワマガリ・ターミナルの保安職員に提示するとさっと確認してそのまま返却される。
「何処に向かうんだ?」
「えっと……クボタ・コロニーからの指名依頼でして……」
正直に言っていいものかとも思ったが隠し事のできないアキ、正直に話してしまう。どんどんと説明していくが……こんな個人ポーターが?と応対している保安局員の表情がどんどんと怪訝そうな顔に変化していく。
「お前……本当にクボタ・コロニーからの指名依頼を受けたのか?」
「本当ですって!信じてください!」
「おい、どうした?」
「このソロがコロニーからの指名依頼を受けたと虚偽の説明をしていたので問いただしていたところです」
偶然か否か、通りかかった別の保安局員もやってくる。帽子から除く白髪がベテランといった風格を醸し出している。ベテラン保安局員はアキの姿を一瞥すると少し関心するような表情をみせた。
「若い子があんな場所に……いや、なんでもない。コロニーからの指名依頼を受けるとは珍しいな……ところでお嬢さん。手土産は何両だい?」
「手土産……?」
若い保安局員は首を傾げるがアキはそれが車両後方に積載されている手土産と言われた貨車を思い出した。
「えーと二両、二両です!」
二両、そうアキが口にするとベテランの保安局員は素早く反応する。無線に手に取ると通信をする。するとぞろぞろと荷役作業員がぞろぞろと集まっていていた。
「号車は?」
「列車後方の二五、六号車です」
「最後方の車両と二両目だ。かかれ!」
号令と同時に荷役作業員が作業を開始し、構内移動用の小さなカーゴトラックに次々と木箱が乗せられてゆく。木箱の中身が気になってしまうが詮索は無用という言葉を思い出し、荷卸の終わりまで機関車の中にひきこもることに決めた。
しかし、その計画はすぐさま消え去る。先程のベテラン保安局員がやってきたのである。
「疑ってすまなかった。クボタ・コロニーの指名依頼配送なんてここ最近全くないものでね……失念していたんだ」
「構いませんよ……私も突然指名依頼をされててんやわんやしていましたし……」
「それに今日はもう夕方だ。ヨコドテに向かうには少し遅すぎるんじゃないかな?
「……そうですよね。今からヨコドテまでですと着くのは深夜……やっぱりやめてここで一泊して行きます」
「そうか、一度詰所に顔を出してくれないか。渡したいものがある」
ベテラン保安局員が言うので、ヴィーを残して保安局員の詰所に顔を出すことにした。
一言かけていくとヴィーは本を読んでいたのか適当に返事を返す。そんなヴィーを放っておいてアキは詰所に顔を出した。
「あのー、すいません。詰所に顔を出してほしいって言われたんですけど……」
一斉に保安局員たちの視線がアキに集まる。そんな中、警備隊長らしき人物がアキの前へと現れた。
「ウチの若い局員がご迷惑を掛けたそうで……」
「いや、大丈夫ですよ。私が何かされたというワケじゃないので……」
「そういうワケにもいかないのだよ。我々のせいで危うく不利益を被りそうになってしまったのでね。お詫びを言っては何だがこちらを差し上げましょう」
そう言い差し出されたのは木製のストックを持ったライフル銃二丁と弾丸の山であった。
「ライフル銃の経験は?」
「一応は……ですけどね。昔、ポーター養成所で教官からみっちり鍛えられましたし、何度か自前のライフルで野盗程度なら追い返したことありますんけど……これ本当に頂いてもいいんですか?」
「構いませんよ。カワマガリでは旧式扱いのライフルですからいずれは廃棄する運命となるのです。そうなるよりは誰かの手に渡って使われる方がいいですから」
もらえるものはもらっていく主義なのでライフルとライフル弾が入った箱を10箱ほど譲り受けて列車に戻るとヴィーがロッカーにしまっていたはずの護衛用小銃を取り出して分解していた。
「……何してんの?」
「何って、整備よ整備。ろくに整備していなかったでしょ?いざって時に使えないとなると大変よ?……って後ろに背負ってるのってライフル銃?ちょっと見せて」
「え?いいけど……」
アキが背負ってきたライフル銃を奪うようにして手に取るとすぐさまコッキングレバーを上げて弾倉の様子を確認する。
「へぇー、クボタ式ライフルの……最新式はマガジン式だけどこのライフルはクリップ式じゃないし、これは旧型かな?んー、見たところ.303弾?アキの小銃は5.56ミリの45ミリだから……まぁ互換性がないけど弾薬自体の流通量は多いから補給は万全ね」
「見たところ……整備不良は無さそう。今すぐにでも使えるけど……」
「ヴ、ヴィー?」
「このライフル、それも2丁もどうしたの?買ってきたの?」
「あ、えっと……ここの警備隊長からお詫びの品だってさ。ほら、さっき不法な配送だって疑わてたでしょ?それのお詫びだって」
「ふーん。まぁ使えるし、しっかりと整備しておくわね」
ヴィーは2丁のライフルを受け取りそのまま整備に入ってしまった。折角ならばまた二人で外食しようとも考えたがヴィーの整備がいつまでかかるのか不明であるため、備え付けの冷蔵庫を覗いてみると唐揚げをした残り、鶏馬の肉が少々残されていた。
「2人分は……ありそうね。ねぇ!今日の夕食は自炊でもいいー?」
『いーよー!』
ヴィーからの了承は得たので備え付けコンロでモモ肉を加熱処理して一度フライパンから取り出して特製ソースの製作である。
ソイソースと砂糖、勿体ないと思いつつもライスワインを少し投入したら特製のソースの完成である。
特製のが出来上がったら先程、取り出したもも肉をタレに絡めながら炒めていく。
「なんだか美味しそうな匂いがしてきたから来てみたけど……何作ってるの?」
「鶏馬の照焼風、ライスも今用意するからちょっとまっててね」
「手伝うわよ」
「ありがとう、じゃあ……お湯を沸かしてくれる?」
「お湯ね、わかったわ」
ヴィーが沸かしてくれた熱湯を乾燥加工したライス袋に入れる。熱湯を入れてから少々……10分から20分ほど待てば炊き立てライスが出来上がる。との謳い文句である。
「保存食っぽいけど食べても大丈夫なの?」
「大丈夫、予備を含めてかなりの在庫があるから一食ぐらいは大丈夫よ」
焼き上がった鶏馬の照焼をそれぞれの皿へと盛り付ける。湯戻ししたライスもちょうどよい感じに仕上がっていた。
「「いただきまーす」」
特製ソースに絡め取られた鶏馬のもも肉、ライスワインによってほんのりと甘く、そして柔らかくなっていた。
「ライスワインって肉を柔らかくさせる効果があるのね」
「そうそう。……ちょっと勿体ないけど美味しく料理をするには色々と工夫するとこんな風に柔らかくなったり甘くなったりするのよ」
「へぇー、料理って奥が深いんだね」
食事を満足に終えた二人は仲良く片付けをしてそれぞれの余暇に入る。アキは購入した本の続き、そしてヴィーはアキがもらってきたライフル銃のっ西武の続きをしている。
そんな中、『防衛白書』の続きを解読しながらふとアキは考えていた。バディを組んでいるヴィーのことについてであった。
「……そういえばヴィーのこと詳しく聞いてなかった。しばらくは一緒に仕事をする仲だし、少しぐらいは聞いてもよかったかも」
少しぐらいは好きなものや出身について会話してもいいとも思うがクボタからカワマガリに来るまでの半日、そういった話はしてこなかった。
「少し……シャイなのかも。それは私もだけど……」
自分自身の自虐をしながら『イヴドール・プロジェクト』のページを解読していく。相変わらず図解などは無く、文章かつ堅苦しい言い回しが多くあり難航していたが少しづつではあるものの、解読は進んでいた。
「イヴドール・プロジェクトはこの『イヴ・ドール』っていう戦闘用人形が軸になっていることは分かったけど……その目的がイマイチなのよね人間社会に溶け込んで一体何をしようとしていたのか……セイジってやつをさせようとしてたのかな?……駄目だ。まだまだ資料が少ないし、わからない単語やら言い回しが多すぎる」
ふと、壁にかけられている時計を見ると針は22時過ぎをさしていた。
「おっと……もうこんな時間?明日も早いしもう寝よう」
洗面台で身だしなみを整えていると部屋からヴィーが出てきた。お手洗いかとも考えたがどうやら違うようで外へ散歩しに行くという。
「こんな時間に?明日も早いからもう寝たら」
「大丈夫よアキ。こう見えても私、健康に気を使っているから」
「そう?あんまり遅くならないようにね。おやすみ」
「うん、アキもおやすみ」
散歩に出かけたヴィーの後ろ姿を見ながらふと思い出す。
(そういえばヴィー、私がもらってきたライフルの使用弾薬の口径、弾倉を見ただけで何も見ずに言い当ててた。……それと使用状況も何も言ってないのに整備してないとかよく整備してるとも……やっぱり、いや流石にそれはない。ポーターズ・ガードの人はすごいんだなぁ……)
一瞬嫌な考えが思い浮かんだがすぐにありえないと、考えを改める。これ以上深く考えると坩堝にはまってしまいそうになるのですぐに忘れ、ベッドへと潜りこんだ。
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