Return of hypothesis Colony
アキとヴィーを乗せた列車は順調に進み、クボタの仮設ターミナルを無事に通過……できなかった。
仮設ターミナルの待避線へ侵入して保安局員の一人から事情を聞いてみるとこの先、クボタ=カワマガリの沿線で大規模な野盗の野営地が見つかったためであり、大規模な掃討作戦をクボタとカワマガリの合同作戦が行われているためであり、流れ弾等を予防するための通行止めだそうだ。
予定では半日ほどかかるそうで出鼻をくじかれたような感じであるがヨコドテ方面に抜ける線路はここしかない。
「まぁー日時の指定は無いからゆっくりと行いけるのが救いかなー。前に時間指定の依頼をうけた時はひどい目にあったからねー」
「物理的に無理な時間指定依頼等を出す依頼人もいますからね、そういった依頼は大抵ポーターズ協会の方で弾かれたりするはずですが……」
「あんな依頼書、大抵嘘っぱちだからね。時間指定なし、積載貨物の重量や種類変更なし、依頼料だって誤魔化されたこともあったしね」
「そ、そんなに」
「そ。ま、全部ポーターズ協会にチクってボコボコにしてもらったんだけどね」
雑談を交わしてはみるものの、中々信号は青へと変わらない。次第に待避線は後発できたポーターたちの列車で埋まっていくが、待っている者もいれば一度クボタまで戻って別ルートに切り替える者もいた。
「今何時?」
「丁度、お昼前よ。どうする?」
「ご飯食べに行きましょう」
「私もそう思うわ」
列車から降りた二人は一目散に屋台街へと向かった。
つい先日やって来た時は夕方と朝、その時も人出は多かったが今日は昼時、比べ物にならないほど人で溢れかえっている。
「随分と人が多いわね」
「コロニーの上層部肝いりの拡張政策ですからその分支払われる給料も多いんでしょうね」
人波をぬって歩いていくと比較的空いていそうな屋台があった。そこにしようとして暖簾をくぐったものの、店主から入店を断られてしまった。
「オ姉サン方、生身ノ人間デスヨネ?スイマセンウチは機械化人専用デシテ……」
店の中を見ると燃料が入っているタンクやオイルとチューブ、そして食事という名の補給を受けている義体化を施した人間たちであった。この店にやってくる人間が珍しいのか奇怪の目で見られている。
「し、失礼しましたー……」
「出稼ぎの労働者が人間だけとは限らなかったわね。……別のお店を探しましょうか」
結局二人がありつけたのはライスを扱う定食屋台であった。
「お二人さん、何にいたしやしょうか」
愛想の良さげな店主がにこやかに話しかけてくる。メニューには定食とだけ書かれており、隣に今日のおかずと書かれ二・三品が書かれていた。
(おかずは……鶏馬の照焼、二尾魚の塩焼……後は鶏馬の玉子焼?なんか珍しいモノがあるじゃない)
「私は鶏馬の玉子焼でお願いします。ヴィーは?」
「私も同じモノにしましょうかね」
「かしこまりました。少々お待ちを」
店主は調理を開始するが、眼の前に現れた鶏馬の卵に驚愕していた。
「そ、それって……」
「これですか?ええ、鶏馬の卵ですよ。丁度新鮮なものが手に入ったので出してみようかと……」
店主はハンマーを取り出してあらかじめ印をつけていた場所を数回叩くとヒビが入り殻が剥け始める。
ある程度の大きさまで殻を割ると中の薄皮を破って大きめのボウルに中身を空けた。
「「おぉ~~~~~~」」
二人が感嘆の声を上げるのもむりはない。巨大な黄身と白身がぬるりとボウルへ出てきたのである。店主はそれをうれしそうにしながらかき混ぜていく。
「まさかとは思うけど……これ一人分……ですか?」
「ハッハッハッ……流石にこれ一人じゃあ多すぎますよ。お客さんがよろしかったら一つづつにしてもいいですよ?」
「冗談はよしてよ」
冗談ですよ。と店主は笑い半分づつししていく。やや大きめの玉子焼き器を取り出しとこに鶏馬の溶き卵を流していった。
「はいよ、お待ちどうさま、鶏馬の玉子焼定食ふたつね」
真っ白なライスとソイスープ、そして大きな玉子焼が鎮座している。
「「いただきまーす!」」
まずはソイスープで喉を潤し、メイン食材である玉子焼きへ手をかける。焼き立ての玉子焼からは白い湯が立ち上っており、食欲をそそられる。
「あ~む、うん。甘くて美味しい」
「玉子焼ってこういった味付けもあるのね」
「他所の店だと塩っぱくしたりするがウチは甘い玉子焼さ。珍しいだろう」
甘しょっぱい玉子焼を食べ、ライスを口に運び、ソイスープで流し込む。合わなそうな気もするが不思議と箸が進んでいき、あんなに大きかった玉子焼はあっという間に無くなってしまっていた。
「ご馳走様でした」
「……ふぅ、私もご馳走様でした。お勘定、お願いします」
「あいよ、二人で一万二千イエンね」
一人当たり六千イエン、クボタのコロニーであれば質にもよるが八千イエンから一万イエンほどかかるのでかなり割安である。
屋台街を後にした二人、他に巡る場所もないので列車に戻り、アキは読書、ヴィーは自室に引き籠って惰眠を貪っていた。
「う~~ん、駄目ださっぱりわかんないや」
本とにらめっこしていたアキであるが本をほっぽり出して背伸びをする。読んでいた本は古本屋からプレゼントされた『防衛白書』という本であった。傍らには辞書やら何処から見つけてきたのか古代の書らしきものとノートが鎮座されており、少しづつ解読しながら読み進めている努力が垣間見られた。
「この本がコロニーを守る警備隊のようなもの記したものだってことは理解できたけど……何、センシャって。自動車に大砲をつけたやつ?なのかしら?こんなものが闊歩してたなんて信じられないわね」
次のページには翼の生えた機械のような物体が載っていた。セントウキという機械らしいのだがそもそも空を飛んでいるものといえば鳥ぐらいしか見たことがなく、こんな鉄の塊が空を飛ぶなんて信じられずにいた。
「こんな鉄の塊をどうやって飛ばしていたんだろ?え?この機械にエンジンを積んでじぇっと?気流ってので飛ばしてたの?不思議なことがあるんだ……」
他にも解読しながら読んでいるがイマイチピンとくるものがない。そんな中目に留まったのは『イヴ・ドールプロジェクト』であった。
「そういえばイヴ・ドールプロジェクトって機械人間?を活用した計画だったのよね?……にしては図解の写真が少ないような」
セントウキやセンシャに関していえば写真やその解説が多少のっているもののイヴ・ドールプロジェクトに関していえば文章しか掲載されていなかった。
解読しつつ読み進めていくと人間と同じような動き、思考を持った戦闘用人形で構成されており、セイジといったものに深く関わる……らしい。
「いくら辞書を使ってもわからないものはわからないわね」
本を閉じたところでドアがノックされる。どうやら野盗の掃討作戦が終了したようで通行が可能となったとの連絡であった。
「さー出発、経由地のカワマガリまで一気に行っちゃいましょ」
列車は峠道へと差し掛かるが山があればトンネルが掘られ、谷底の深い谷や川には鉄橋がかけられており、それほど苦労せずに中継地点としていたひとつ、カワマガリのコロニーが見えてきた。
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