第9話|いつも通りの朝

朝、目が覚めた。


カーテン越しの光は、

昨日と変わらない。


時計を見ると、

いつもの時間。


特別なことは、何もない。

体調も問題ない。


俺は、

いつも通りに起き上がった。



階段を下りると、

キッチンから音がする。


「おはようございます、ジロウ」


リアが、

いつもの調子で振り向く。


「おはよう」


それだけの会話。

それだけで、

朝は進んでいく。


朝食の内容も、

量も、変わらない。


「……今日も、変わりありませんでしたか?」


「大丈夫。いつも通り」


リアは頷き、

それ以上は聞かなかった。


それが、

この家の“普通”だ。



家を出る。


門を閉める音が、

静かな朝に溶ける。


通学路。

制服の集団。

聞き慣れた足音。


世界は、

ちゃんと日常を続けている。


「やっほ、二郎君」


背後からの声。


「おはよう、橘」


橘鏡花は、

当たり前みたいに隣を歩く。


天気の話。

授業の話。

どうでもいい話。


どれも、

普通だ。


「困ったことあったら言ってね。

 手伝うよ。力、貸すし」


「ありがとな」


校舎が見えてきて、

橘は自然に歩調を緩めた。


「じゃ、また後で」


それだけ言って、

少し距離を取る。


人の流れは、

途切れない。



俺は、

いつも通りに学校へ向かう。


この朝が、

昨日と同じだと信じたまま。


今日も一日が、

始まる。

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