第4話|同じこと

翌朝も、

俺の周りはいつも通りだ。


席に着いて、授業が始まる。

それなのに、

教室が少しだけ広く感じた。


黒板を見る前に、

後ろを一度だけ振り返る。


ざわめきが、遠い。


……まあ、

そういう日もある。


教師の声で、

教室の空気が動き出す。


それでも、

さっきの感覚は完全には消えなかった。


その違和感が形になる前に、

背後で足音が止まる。


「……先輩」


ゆっくり振り向く。


松本綾香が、そこにいた。


「……再測定です……」


「……そうか」


綾香は何も言わず、

こちらを見ている。


俺の方が、

先に視線を外した。


彼女はそれ以上、

何も言わずに離れていく。


教室の音が、

少し遅れて戻ってきた。


「困ってる?」


背後から、

いつもの声。


「……変な後輩だな」


そう言うと、

後ろから小さく笑う気配がした。


「うん。

 私から見ても、確かに変な後輩だよね」


少しだけ、間。


「でも、

 放っておけない感じはするよ」

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