私がネノコ様を手に取っていたら…

 白波さんを…というのは冗談ですが、お題を忘れる程の物語の構成と速筆に驚かされます。更に、小説を書き始めて3ヶ月しか経過していない事実が信じられません。それに対して遅筆な私からすると、とても対称的な作者様だと感じています。

 読者がイメージしやすいテーマを取り上げた本作品ですが、そのまま放り投げることはしていません。リアリティのある結末を際立たせているのは、表現の豊かさと抑揚の巧さだと思います。

 例えば、『マナから見えないテーブルの下で、苛立ちを隠すように手を強く握りしめた。』など人物の動きがイメージしやすい描写を盛り込むことで、その後に来る単調になりやすい文章とも調和がとれて、感情移入しやすい仕上がりになっているのだと思います。そして主人公の治療に対しての心境の吐露と、現在の夫婦関係にも説得力があります。

 各話の終わり方も中途半端にはならずに、続きが気になる書き方を徹底しています。途中で人物に対して“無事で良かった”と思っても“でもまだ何かあるんでしょ?”と緊張と緩和の巧さも結末に反映されているのだと思います。