第4話 仇―雷鳴・バイク・ブレード
料金ゲート跡は、時間に置き去りにされていた。
屋根は途中で途切れ、柱だけが残っている。風が吹くたび、どこかで金属が鳴った。
雨は、細いままだった。
濡れるというより、世界の表面が少しだけ曇る感じ。
ヴェノムが先に動いた。
重いブレードを引き抜く。刃の縁に雷光がまとわりつき、遅れて音が来る。
「ここまで来るとは思わなかった」
声は、妙に穏やかだった。
ライデンは答えない。
左腕のブレードを展開する。高周波が立ち上がり、空気が薄く震える。
二人の間に、言葉はもう要らなかった。
ヴェノムが踏み込む。
重さを活かした一撃。地面が砕け、水が跳ねる。
ライデンは横に流れる。
距離を保ち、刃を走らせる。
金属音。
火花。
一瞬、照明が落ちる。
「相変わらず、一直線だな」
ヴェノムが言う。
「考えないのか?」
ライデンは、次の一歩を踏み出す。
考えるより、速い。
刃が交差する。
雷鳴が、すぐ真上で鳴った。
衝撃で、ヴェノムの体勢がわずかに崩れる。
その隙を、ライデンは逃さない。
低く構え、踏み込む。
刃が、相手の腕を裂いた。
血が雨に混じり、色を失う。
「……やるな」
ヴェノムは距離を取り、バイクに手を伸ばす。
エンジンが唸る。
「だが、ここからだ」
二台のバイクが同時に走り出す。
短い直線。だが、十分だった。
ヴェノムが体を倒し、刃を振る。
雷光が弧を描く。
ライデンは、減速しない。
むしろ、距離を詰める。
近すぎる。
そう思った瞬間、雷が落ちた。
世界が、白くなる。
音が消え、時間が伸びる。
ライデンは立ち上がり、刃を最大出力にする。
高周波が、現実を薄く切り分ける。
一閃。
抵抗は、ほとんどなかった。
次に色が戻ったとき、ヴェノムのヘルメットが宙を舞っていた。
遅れて、体が崩れる。
バイクは走り続け、壁に突っ込む。
炎が上がり、すぐに音を立てて燃え始めた。
ライデンは、数メートル進んでから止まる。
バイクを降り、振り返る。
地面に、首が転がっている。
表情は、もう読み取れない。
雷鳴が、遠ざかる。
ライデンはブレードを解除した。
唸りが消え、雨音だけが残る。
仇は、そこにいた。
そして、もういない。
世界は、何も言わなかった。
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