第21章「民衆の力」


翌日、カイトは工房に戻った。


そこには、リリアが待っていた。まだ包帯を巻いているが、顔色は良い。


「カイト! 無事だったのね!」


「リリア! もう起きて大丈夫なのか?」


「うん。治癒魔法のおかげで、だいぶ良くなったわ」


リリアは笑顔を浮かべた。だが、すぐに真剣な顔になった。


「カイト、聞いたわ。魔導砲のこと」


「ああ……」


「あなたのせいじゃないわ。悪いのは、勝手に技術を盗んだ人間よ」


リリアの言葉が、カイトの心を癒した。


「ありがとう、リリア」


「それで、これからどうするの?」


カイトは、設計図を広げた。


「魔導砲を無力化する装置を作る。『反魔導フィールド発生器』だ」


「反魔導フィールド?」


「ああ。魔力の流れを乱すフィールドを展開する。そのフィールド内では、魔導砲が機能しなくなる」


リリアは、設計図を見て、目を輝かせた。


「すごい! これなら、魔導砲を無力化できるわ!」


「でも、これだけじゃ足りない」


カイトは、別の紙を取り出した。


「『技術監視委員会』を設立する。兵器技術の開発と使用を監視する国際機関だ」


「国際機関?」


「ああ。各国が参加して、兵器の開発を相互に監視する。そして、禁止兵器のリストを作り、それを守らせる」


カイトの構想は、壮大だった。


「でも、各国が協力するかしら?」


「わからない。でも、やるしかない」


カイトは、決意に満ちた目でリリアを見た。


「技術者には、責任がある。自分の作ったものが、どう使われるかを見届ける責任が」


リリアは、カイトの手を握った。


「私も、手伝うわ」


「ありがとう」


カイトは、反魔導フィールド発生器の開発を開始した。


リリアと共に、魔法陣の設計を行う。魔力の流れを乱すためには、複雑な干渉パターンが必要だ。


一週間後、試作機が完成した。


「テストしてみよう」


カイトは、試作機を起動させた。装置の周囲に、目に見えない波紋が広がる。


そして、魔導砲の小型版を発射してみた。


砲弾が、フィールドに入った瞬間、魔力が乱れて消滅した。


「成功だ!」


カイトとリリアは、抱き合って喜んだ。


だが、問題もあった。


フィールドの範囲が狭い。半径十メートル程度しかない。これでは、広域の防衛には使えない。


「もっと出力を上げないと……」


カイトは、改良を続けた。


その頃、王都では大きな動きがあった。


民衆が、立ち上がったのだ。


「魔導砲反対!」


「技術を戦争に使うな!」


「カイトを支持する!」


王宮の前に、数千人の民衆が集まった。


彼らは、カイトの魔導車に乗って生活が豊かになった人々だった。農民、商人、職人。カイトの技術の恩恵を受けた者たち。


「カイトの技術は、平和のためのものだ!」


「兵器開発を止めろ!」


民衆の声は、日に日に大きくなっていった。


エリシアは、その様子を見て、カイトに言った。


「カイト、民衆があなたを支持しています」


「僕は、何もしていないのに……」


「いいえ。あなたは、人々の生活を変えました。だから、人々はあなたを信じているのです」


エリシアの言葉に、カイトは胸が熱くなった。


そして、カイトは決意した。


「エリシア様、僕は民衆に語りかけたいです。僕の考えを、直接伝えたい」


「わかりました。広場で、演説の場を設けましょう」


三日後、王都の中央広場に、巨大な演台が設置された。


そして、その周囲には、数万人の民衆が集まっていた。


カイトは、演台に立った。


緊張で、手が震える。だが、前を見た。


無数の顔。期待に満ちた目。


カイトは、深呼吸して、口を開いた。


「皆さん、今日はお集まりいただき、ありがとうございます」


カイトの声が、魔法で増幅され、広場全体に響いた。


「僕は、カイトと言います。魔導車を作った者です」


拍手が起こった。


カイトは、続けた。


「最近、僕の技術が、兵器に転用されました。魔導砲という、破壊兵器が作られました」


どよめきが広がった。


「それは、僕の本意ではありません。僕は、人々を幸せにするために技術を作りました。殺すためではありません」


民衆が、静かにカイトの言葉を聞いている。


「ですが、技術は一度世に出れば、作った者の手を離れます。善にも、悪にも使われます。それが、技術の宿命です」


カイトは、拳を握りしめた。


「だからこそ、僕たち技術者には、責任があります。技術がどう使われるかを見届け、悪用されれば対策する。それが、僕たちの使命です」


「そして、技術を使う人々にも、責任があります。技術を、何のために使うか。誰のために使うか。それを考える責任が」


カイトは、民衆を見渡した。


「皆さん、お願いします。魔導車を、人を傷つけるために使わないでください。人を助けるために、使ってください」


民衆が、静かに頷いている。


「そして、僕も約束します。これからも、人々のための技術を作り続けます。希望を作り続けます」


カイトの言葉が、終わった。


しばらくの沈黙の後、拍手が起こった。


最初は小さかったが、やがて大きな波となって広がった。


「カイト!」


「鋼鉄の英雄!」


「希望の技術者!」


民衆の歓声が、空に響いた。


カイトは、涙が溢れそうになった。


ありがとう。


みんな、ありがとう。

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