第17章「魔導鉄道計画」
防壁車の成功を受けて、軍の士気は高まっていた。だが、カイトの頭には、別の問題が浮かんでいた。
補給だ。
魔王城までは、まだ二百キロメートル以上ある。そして、補給線は日に日に伸びている。魔獣に襲われるリスクも高まっている。
「このままでは、補給が追いつかない……」
カイトは、地図を見ながら呟いた。
その時、マティアスが声をかけてきた。
「カイト、何を悩んでいるんだ?」
「補給線の問題だよ。距離が長すぎて、魔導車だけでは効率が悪い」
「ふむ……」
マティアスは、地図を覗き込んだ。
「ならば、固定式の輸送手段はどうだろう?」
「固定式?」
「ああ。レールを敷いて、その上を大型の車両が走る。鉄道だよ」
カイトは、ハッとした。
鉄道。前世でも、鉄道は物流の要だった。大量の物資を、効率的に運べる。
「でも、レールを敷くには、時間がかかるぞ」
「確かに。だが、簡易的なレールなら、早く敷ける。木製の枕木に、鉄のレールを乗せるだけだ」
マティアスは、紙に図を描いた。
「そして、魔導車の技術を応用すれば、魔力で動く鉄道車両が作れる」
カイトの目が輝いた。
「魔導鉄道……!」
「そうだ。これなら、一度に大量の物資を運べる。そして、レールは恒久的なインフラになる。戦争が終わった後も、使えるぞ」
カイトは、興奮を抑えきれなかった。
「それだ! それを作ろう!」
二人は、すぐに設計を始めた。
魔導鉄道の設計は、魔導車よりも複雑だった。
車両は、大型で重い。そのため、強力な魔導エンジンが必要だ。そして、レールの強度も重要だ。重い車両が通っても、歪まないようにしなければならない。
カイトとマティアスは、両国の技術者を総動員して、プロジェクトを進めた。
一週間後、最初のプロトタイプが完成した。
「魔導機関車、一号機」
車体は、魔導車の三倍の大きさ。六つの車輪を持ち、強力な魔法陣が刻まれている。そして、その後ろには、貨車が三両連結されている。
「テストしてみよう」
カイトは、機関車に乗り込んだ。操縦席は広く、大きなレバーとペダルがある。
「魔力、注入」
カイトが魔力を注ぐと、魔法陣が輝いた。
ゴゴゴゴ……
低い音が響き、車輪が回り始めた。
機関車が、動き出した。
ゆっくりと、だが確実に。貨車を引きながら、レールの上を進む。
「成功だ!」
技術者たちが、歓声を上げた。
カイトは、窓から外を見た。風景が流れていく。速度が上がる。
魔導車より速い。そして、安定している。
「これは……すごいぞ!」
カイトは、笑顔を浮かべた。
魔導鉄道のニュースは、すぐに王都に伝わった。
そして、王は驚くべき決断を下した。
「魔導鉄道を、王都から魔王城まで敷設せよ」
その命令は、前線にいる全ての者を驚かせた。
「陛下、それは無謀です!」
レオンハルトが、反対した。
「五百キロメートル以上のレールを敷くには、膨大な資材と労働力が必要です。戦時中に、そんなことは――」
「だからこそ、やるのだ」
王の声は、断固としていた。
「この鉄道があれば、戦後の復興も早まる。そして、隣国との交易も活発化する。これは、戦争のためだけではない。未来のための投資だ」
エリシアが、王の意図を補足した。
「父は、戦争が終わった後の世界を見据えているのです。鉄道で国々が繋がれば、再び戦争をする理由がなくなる」
カイトは、王の先見性に感服した。
「わかりました。魔導鉄道を、完成させます」
こうして、史上最大の建設プロジェクトが始動した。
鉄道の建設には、両国の労働者が動員された。
王国からは、建設職人と魔法使い。帝国からは、土木技術者と鉄鋼職人。
そして、解放された村々の住民も、労働者として参加した。
「鉄道ができれば、俺たちの村も豊かになる」
「戦争が終わったら、この鉄道で商売ができるぞ」
希望が、人々を動かした。
レールは、一日に平均三キロメートルのペースで敷設されていった。
カイトは、建設現場を視察して回った。
「この区間の地盤が弱い。補強が必要です」
「魔法陣の配置を、もう少し密にしてください」
細かな指示を出しながら、品質を管理する。
前世の生産技術の知識が、ここでも活きた。
そして、二ヶ月後、最初の区間が完成した。
王都から、百キロメートル地点まで。
開通式が行われた。
王とエリシア、そして両国の代表者が出席した。
カイトが、魔導機関車の操縦席に座った。隣には、マティアスがいる。
「カイト、君が最初の運転手だ。光栄だろう?」
「ああ。でも、緊張するよ」
カイトは、レバーを握った。
「出発します!」
魔力を注入する。
機関車が、ゆっくりと動き出した。
貨車には、大勢の人々が乗っている。兵士、技術者、そして村人たち。
機関車は、レールの上を滑るように走った。速度が上がる。時速五十キロメートル。六十。七十。
「速い!」
「揺れが少ない!」
人々が、歓声を上げた。
カイトは、前方を見た。レールが、地平線まで続いている。
このレールが、いつか大陸全土を繋ぐ。
そう信じて、カイトは機関車を走らせ続けた。
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