第2話 Fランクの冒険者、初めての試練


翌朝、ダリルはギルドの掲示板を見つめていた。

Fランクの依頼は少なく、単純な討伐や収集が多い。

だが、それで十分だった。まずは実戦経験を積む必要がある。


「さて、今日はどの依頼を受けるか……」

少年は小さな声でつぶやき、指を掲示板の依頼に沿わせる。

その中に、森の西部に出現したスライム討伐があった。

「距離も近く、数も少ない……ちょうどいい」


装備は簡素だ。軽い革鎧と、背負った荷物だけ。

普通の冒険者なら剣や魔法の杖が必須だろう。

だがダリルには、誰にも真似できない能力があった。

投擲の精度は必中、威力は倍加、さらにクリティカル発生率が高い。


森に足を踏み入れると、朝露に濡れた草が足首に絡む。

鳥のさえずりと遠くの小川のせせらぎが、静かな音を作る。

しかし、森の奥には危険が潜んでいた。

小型スライムが地面からぬるりと顔を出す。


「来たな……」

ダリルは荷物から小石を取り出す。

手のひらに収まる石は普通のものだが、投げると違う。

彼の投擲は、目標を逃さず、衝撃は計り知れない。


「まずは一体……」

石は弧を描き、スライムの頭を直撃した。

ぷるぷると震え、やがて水のように崩れる。

周囲のスライムも警戒心を持ちつつ、ゆっくり接近してくる。


「なら、まとめて……」

ダリルは荷物の中から小型石を無数に取り出す。

アイテムボックスの中には、無限に石が補充されているのだ。

石は空中で連鎖的に飛び、スライムたちは次々に消滅する。


数分後、森は静寂を取り戻した。

倒したスライムの数はギルドに報告すれば、十分な報酬になる量だ。

「……意外と楽しいかもしれない」

ダリルは笑みを浮かべ、荷物を背負い直した。


森の中ほどまで進むと、突然、木の陰から大きな影が現れる。

それは小型ではなく、中型のスライムだった。

「ちょっと強そう……でも、やるしかない」

ダリルは決意し、投擲の姿勢を整える。


投げた石は中型スライムに命中する。

しかし、表面が厚く、少し弾かれてしまった。

「なるほど……こういう相手には工夫が必要か」

少年は荷物から小型の鉄球を取り出す。

重さで威力を上げ、スライムの硬い体を打ち破る作戦だ。


鉄球を投げると、スライムの表皮に深く刺さった。

スライムは泡立ち、体を縮めて消滅した。

ダリルは息を整え、森の奥に進む。

「Fランクでも、少しずつ力を見せられる……」


森の出口付近、薄暗い場所で、奇妙な光を放つ草を見つけた。

それは自然の魔力が集中した場所のようで、触れると微かに暖かい。

「……これは、何だ?」

荷物持ちとしての感覚では、戦闘用アイテムを作れる可能性がある。

ダリルはそっと触れると、手のひらに小さな光の結晶が出現した。


「……新しいスキルかもしれない」

ギルドに戻れば、これを解析できるだろう。

しかし、ダリルはまだ知らない。この光の結晶は、後に彼の投擲を

さらに特殊化させ、無限の可能性を生む第一歩になることを。


帰路、森を出たところで、町の広場にギルドの掲示板を再び見つけた。

次の依頼はBランク昇格クエストの予備調査だ。

普通ならFランクが挑戦できない高難度だが、

ダリルは自信を持って名前を書き込む。


「……俺、ここから始めるんだ」

荷物を背負い、少年は小さく笑った。

まだFランクだが、投擲とアイテムボックスの力は

すでに普通の冒険者を超えている。


「いつか、レッドスケルトンを見返してやる」

心の奥底で決意が燃え上がる。

そして、未知のスキルと力を求めて、

ダリルの冒険は次の段階へと進み始めた。


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