異世界荷物持ち伝説~ダリルの最強冒険譚~

塩塚 和人

第1話 追放の荷物持ち


ダリルは荷物を背負いながら、荒れた森を歩いていた。

まだ十四歳の少年だが、背中の荷物は大人でも重いほどだ。

彼の職業は冒険者パーティー「レッドスケルトン」の荷物持ち。

戦場では役に立たない存在として、仲間から蔑まれる立場だった。


「ダリル、お前、また戦場で何もできなかったのか」

リーダーのクリスの声が、鋭く響く。

タンクのボルタスも腕を組み、冷たい視線を送った。

魔術士ネメシアは眉をひそめ、ヒーラーのセレナも黙っている。


「ごめんなさい……今回は、攻撃に参加できませんでした」

ダリルは頭を下げ、荷物の重みを改めて感じた。

しかし、彼のスキルは「アイテムボックス」と「投擲」。

普通の荷物持ちとは違い、特殊な能力を持っていた。


「能力があるなら、役に立てよ!」

クリスの声は怒りに満ちていた。

ダリルは小さく息を吸い、投擲スキルを発動する。

石を拾い、正確に遠くの標的に投げた。


石は空中で閃き、敵の頭部に命中する。

その威力は通常の投擲をはるかに超えていた。

クリティカルが発動し、敵は倒れ、仲間たちは驚愕する。


「な……何だ、この力は……」

ボルタスの声が震えた。

だがクリスの表情は変わらない。

「それでも荷物持ちだ。戦力として数えられん」


その言葉に、ダリルの胸は締め付けられる。

力があるのに、評価されない――それが現実だった。

翌日、パーティーはダリルを追放した。

理由は簡単だ。戦場で戦わない荷物持ちは不要、ということだ。


ダリルは一人、町の外れにある小さな冒険者ギルドに向かった。

そこにはFランクから始める冒険者が登録できるという。

「……Fランクか、やり直しだな」

少年は小さくつぶやき、ギルドの扉を押した。


ギルドの中は活気にあふれていた。

冒険者たちが情報を交換し、依頼を受けて忙しそうに動いている。

カウンターの向こうには、眼鏡をかけた受付の女性。

「新規登録ですか? 名前と職業をお願いします」


「ダリルです。職業は荷物持ちです」

女性は少し驚き、メモ帳に書き込む。

「荷物持ち……まあ、Fランクからですね」

ダリルはうなずき、Fランクとしての初めての依頼を受けた。


最初の依頼は、森のモンスター退治だった。

小型のスライムを数匹倒すだけの簡単なものだ。

だが、これがダリルにとっての第一歩だった。


森に入ると、モンスターたちが姿を現す。

小型のスライムが地面から這い出し、襲いかかってきた。

ダリルは石を拾い、投擲スキルを発動する。

石はまるで意思を持ったかのように、スライムを貫いた。


スライムは一撃で消滅し、次々と現れる仲間も同じように倒れる。

「必中……威力倍増……クリティカル発生」

ダリルの心は高鳴った。自分の能力は本物だと確信した瞬間だ。


依頼を終えた後、ギルドに戻ると受付の女性が笑顔を見せた。

「Fランクの冒険者にしては、ずいぶん手際がいいですね」

「ありがとうございます……でも、これからも頑張ります」

ダリルは背中の荷物を揺らしながら、目を輝かせた。


森の中での戦いを終え、ダリルは次第に自分の可能性を理解していく。

スキル「投擲」は通常を超えた威力を持ち、

「アイテムボックス」は戦術の幅を広げる無限の力となる。

まだFランクの少年だが、その成長速度は周囲の想像を超えるものだった。


「いつか……必ず、レッドスケルトンを見返してやる」

ダリルは固く決意し、森を後にした。

彼の冒険は、ここから本格的に始まるのだ。


小さなFランクの荷物持ちは、誰も予想しない形で

世界を揺るがす存在へと変わろうとしていた。


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