第3話 空腹率100%の危機(?)
目が覚めると視界は、いつもと同じライトグレーの無機質な静かな自室の天井。起きた湊に気がつき、茶々丸がベッドに飛び乗ってくる。
【名前:茶々丸】
【状態:至福(おはよう! 朝ご飯!カリカリの! お皿の水変えて! 散歩! 大好き!)】
湊は、茶々丸のご飯を準備しながら、ステータスを眺めた。状態:至福。親愛と喜びの感情に満たされていく。この方法を使えば、自分という器が壊れることを防げるかもしれない。湊は思いついた方法を実行に移す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「湊……お前……」
教室に着いた湊は思いついた方法を早速実行に移した。朝のホームルーム開始前のざわついた教室の中。拓海のウザ絡みは一旦、無視する方向で、クラスの女子に視線を向ける。
【名前:日野 陽葵】
【年齢:16歳】
【職業:高校2年生/陸上部エース】
【知力:39 筋力:77(走力と持久力に大幅補正あり)魅力:72】
【状態:向上心(大)】
【異常:空腹 60% (もっと焼きそばパンが食べたい)】
日野 陽葵(ひの ひなた)。陸上部のエース。中距離走では県内トップクラスの実力を誇る、クラスカースト上位の一人だ。登校した湊は教室内を見回し、クラスメイトのステータスを観察した。友人とおしゃべりする小さな幸福、今日も1日授業で拘束されることの気怠さから小さな悪意、脳天気な拓海の「天気が良いな」というだけで生まれる、どうでも良い小さな喜び………
そんな中で、日野 陽葵のステータスは、向上心と底抜けの明るさで輝いて見えた。そう、湊が考えた作戦は、日常の中で悪意にさらされた心を、強い善意で上書きする。つまり、日野を見つめ続けた。
(なんだこれは………)
日野を見つめているうちにステータスに表示【異常】が追加された。どうやら日野は空腹のようだ。
(朝ご飯、抜いたのかな?)
【名前:日野 陽葵】
【異常:空腹 82% (もっと焼きそばパンが食べたい。おなか減ったよ)】
(空腹のパーセントがぐんぐん上昇している!このままでは100%をすぐに超える!ホームルーム開始まではまだ時間がある!)
100%を超えた時、何が起こるかわからない。湊は売店に走った。売店のおばちゃんから、焼きそばパン(200円)を購入して教室に戻る。
【名前:日野 陽葵】
【異常:空腹 99% (もっと焼きそばパンが食べたい。おなかペコペコだよ)】
(間に合った!まだ100%になっていない。僕のこの能力で日野さんを助ける!)
「日野さん!」
「空森くん。どうしたの?」
突然、猛スピードで教室に駆け込み、目の前で呼びかけられた日野は、目を白黒させながらも、湊の手の焼きそばパンと湊を交互に見つめる。
【名前:日野 陽葵】
【異常:空腹 100% (もうだめ~)】
湊の目の前で日野の空腹が100%を超えた。湊の全力は間に合わなかった……そして……
ぐぅー、ぐぅー!
「てへ!お腹鳴っちゃった。2回も!朝ご飯はしっかり食べたけど、部活の朝練で頑張りすぎて、お腹が減っちゃった!」
「お腹が減って、お腹が鳴っただけか(空腹が100%を超えたとき何が起こるか分からなかったから……世界が滅びなくてよかった!)」
「何言っているの!女子にとってお腹の音を聞かれるのは、スゴく恥ずかしいんだよ!責任取って欲しいな」
日野は湊が持つ焼きそばパンに熱い視線を送っている!この視線の圧力、ステータスを通じて感じる「お腹ペコペコだよ」という、強い思いに屈した湊は焼きそばパンを献上した。
(これは……)
もぐもぐ、
もぐもぐ、
(無心に食べる姿は、どことなく茶々丸っぽい、気がしないでもない……)
そろそろホームルームが始まる。湊はもぐもぐ中の日野から離れ、自分の席に戻った。周囲のクラスメイトのザワつきから、湊に向けられる明確な悪意を感じた。
「あの日野と陰が薄い空森って、仲良かったっけ?」(小馬鹿にした感情)
「空森のやろー、馴れ馴れしくしやがって……」(嫉妬)
「お前……あのスポーティ少女のことが……俺はもっとギャルギャルしたほうがな……これは語り明かさないといけないな」(拓海)
嫉妬の黒い粒が飛んでくるが、日野から溢れる『焼きそばパン最高!』という黄金色(つまり油で輝く焼きそばソースの色)のオーラがそれを弾き飛ばしていく。
【名前:日野 陽葵】
【異常:空腹 15% (もっと焼きそばパンが食べたい)】
(……焼きそばパン大好きなんだね。ちょっとお腹が減ってきてるね!)
設定紹介
焼きそばパン……叡華高校売店の人気商品。販売価格200円。大きめなコッペパンにたっぷりな味濃いめの焼きそばと少しの紅ショウガと青のり。ボリューム満点で運動系部活の味方。昼休みにはいつも完売する。
日野 陽葵……ショートカットが眩しいスポーティ少女。現在の悩みは、お昼を日替わり定食(大盛り)にするか? カツカレー(大盛り)にするか?
湊は放課後、茶々丸用にちょっとお高めな半生ドックフードを買うか、日野用にコンビニで骨なしチキンを買うか、選択に迫られる。
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