〈後編〉

 一夜明けて。

 枕元の眼鏡を取り、私が寝ぼけまなこで布団から出ていくと、キッチンで朝食を作っているニカがいた。


「おはよ……もう起きてたんだ?」

「先輩のオナラの音で起きちゃいました」


 ニカの第一声で私は一気に目が覚めた。


「はぁああああ!? 私そんなことしませんけど!?」

「あはは! ウソウソ!」


 ケタケタと笑うエプロン姿の小悪魔が憎たらしい。


「もう! ニカはそうやっていっつも私のことからかうんだから!」

「今さら恥ずかしがることないのに。ていうかあたし、昨夜はそれ以上に恥ずかしいこと先輩にされてましたからね~?」

「うっ……」


 ぐうの音も出ないご指摘。


「さてさて、面倒くさがりのめぐ先輩も今朝はしっかり食べましょうね~。何てったってお祝いの朝なんですから」

「お祝い?」


 ミックスベジタブル入りのオムレツが、手際よくお皿に盛りつけられていく。仕上げにはケチャップでハートマークを描いて。


「そうですよ~。あたしたち二人が結ばれた記念日です」

「結ばれ……心も、カラダも、ってこと……?」

「さっすが~! ムッツリ先輩は理解が早いですねぇ~」

「一言多いからぁ!」


 私の文句を遮るようにトースターの音が鳴った。無駄話を切り上げる頃合いみたいだ。




 最低限の身支度を済ませた私は、ニカとの食卓についた。香ばしいパンの匂いと、オムレツの甘い匂いが食欲を誘う。


「んー、おいしい」

「ありがとうございます。それより先輩、昨日書き上げた小説、調子のほうはどうですか~?」

「まあ、反応はぼちぼちかな」

「なるほど~。確かにブクマいくつか増えてましたもんね~」

「うん…………え!? 何でニカが知ってるの!?」


 私はニカに小説を書いてるとは言ってたけど、アカウントまでは教えた覚えはない。


「何でって、こないだ酔っぱらって自分から口走ってたじゃないですか~、めぐろサンマー麺先生ぇ」

「ペンネームで呼ばないでー!」


 この調子だと、私がヘタレ攻め先輩と誘い受け後輩のBLばかり書いてることもバレバレだろうな……。


「大丈夫ですよ~。みんなには内緒にしてあげます。あたしと先輩だけの秘密ってことで」


 ニカは自分の唇に触れさせた人差し指を、私の唇につけて封をした。


 秘密も、お祝いの日も、ニカと私、二人だけで共有する出来事が増えていく。

 今までも、これから先も、ずっとずっと。




〈了〉

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ニカの手も借りたい(※やらしい意味ではない) 真野魚尾 @mano_uwowo

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