第2話 悪魔の力とは

 エピドロメアス対策本部局長、近藤重隆。

 その姿はだいたい50代、老いているとしても60代くらいだろうか、体格も凄まじいがそれよりも凄まじいのは近藤から漂っているこの光輝く様な神々しいオーラだ。

 噂によれば、現在もっとも天使の力を行使できる存在なんだとか。


「本日は強引なやり方ではありましたが、来ていただきありがとうございます」


「俺になんの用なんですか?」


「要件を言う前に一つ、我々は現在とある計画を行っているのです」


「計画?」


 近藤が言っていた計画とは、一体なんのことなのだろうか。

 確か最近のニュースだと、アメリカと日本が共同してエピドロメアスを討伐する計画が立てられているというのは見たことがあるが、恐らくそれではないだろう。

 局長と2人きり、つまり他の黒服や社員に聞かれてはまずい情報を怜に伝えようとしているのだろう。


「人工悪魔についてです。ご存知ですか?」


「人工悪魔······?」


「はい。人工悪魔というのは、エピドロメアスが潜んでいるゲートにある悪魔の残穢を天使の力で浄化、強化することで継承型の悪魔と同等、もしくはそれ以上の力を手に入れると言った物です」


 人工悪魔、始めて聞く名前だ。

 近藤曰く、悪魔というのは支配者から授けられた悪魔の力以外にもゲート内に悪魔の残穢があるという。

 残穢だけでは力を行使出来ないので、天使の力を持つ能力者が浄化と強化をすることで継承型と同等かそれ以上の能力を発揮できるようになるという。

 人工悪魔はまだ数が少なく、現在人工悪魔を行使している能力者は世界に4人しかおらず、日本にはまだその能力者は居ないとのこと。

 ここで怜は嫌な予感がした。

 もしかして自分に人工悪魔の力を授けるのではないかと思った。


「もしかして······」


「お察しの通り、辻井さんにはその人工悪魔の力を行使して頂きたくお呼びしました」


「どうして俺が? もっと適正な人がいるでしょうに」


 嫌な予感が当たった。

 近藤は日本初の人工悪魔能力者を怜に決めていたのだが、怜は自分より他にもっと適正な人がいるのに何故自分を選んだのか気になっていた。

 しかし近藤が怜を選んだのには理由があった。


「これは私が決めた事では無いのです。決めたのは支配者です」


「支配者って、この地球に天使と悪魔の力を残したっていう·······」


「そうです。その支配者が地球にメッセンジャーを寄越し、辻井さんを人工悪魔の能力者にするようにと書き記してきました」


 決めたのは局長である近藤ではなく、天使と悪魔の力を授けた支配者のようで、数日前に支配者のメッセンジャーが一通の手紙を本部に寄越したそうだ。

 それはそれで何故支配者は自分を選んだのか、また別の疑問が浮かぶ。

 歴史によれば支配者が力を授けた人間はこれといった共通点がなく、無作為に選んだと言う風に教えられたが、自分も無作為に人工悪魔に選ばれたというのだろうか。


「しかしご安心を、人工悪魔の力は浄化された力。継承型の悪魔の力と違い暴走する危険性は0に等しいです」


「0に等しいってことは、必ず暴走しない訳では無いんですね?」


「······天使の力が弱く、完全に浄化出来ていないケースが何回かありました。ですが、今回の力は最高ランクであるS級の能力者を2名、A級の能力者を5名派遣し、完全に浄化しているので暴走の危険性は無いかと」


 人工悪魔の元となる悪魔の残穢にはエピドロメアスの呪いが掛かっており、それを完璧に浄化しなければ能力の核となる悪魔の力が暴走してしまう。

 こういったケースが過去何度か起きたようで、近藤は日本初の人工悪魔能力者を完璧に完成させるためにS級とA級を合計7名派遣し、完全に浄化する事に成功したようで暴走の危険性は無いと言う。

 この近藤の提案を受ければ、必ず人生が変わる。

 受けなければ、あの手紙が正しいのならばこの地球が危険に曝されてしまう。


「······分かりました。力を行使させて下さい」


「受けて頂けるのですか!?」


「はい」


 怜は近藤の提案を受け、人工悪魔の力を授かる事にした。

 その後、怜は近藤に地下施設に連れて行かれ、精密検査などを行い、最後に専用職員が防弾のクリアケースにはいっている黒い球体を持ってきた。恐らくあれが人工悪魔のコアなのだろう。

 

「このコアを体内に取り込めば、晴れて能力者となります。覚悟は出来ましたか?」


「······はい」


 クリアケースから黒いコアを開封し、怜が手をかざすと凄まじいオーラを放出し、失敗かと思われた途端、その凄まじいオーラが全て怜の体内に吸収されていった。

 怜も感覚として人工悪魔の力が自身の中に全て入ったというのが感じ取れていたので、これは成功したのだろう。


「素晴らしいです。これで貴方は日本初の人工悪魔能力者です」


「はい」


「これからは我が国、いや、世界の為にその力を存分に使ったご活躍、期待していますよ」


 これで怜は名実ともに日本初の人工悪魔能力者となった。

 これからの活動は基本的には公の活動では無く、正体を隠した状態での活動となった。

 それもその筈、怜は今まさに日本初、そして世界で5人目の人工悪魔能力者として覚醒したのだから正体がバレればマスコミやニュースにも取り上げられ、まともな生活が送れなくなる可能性があるからだ。

 なので今の怜は言わば影の覚醒者と言ったところだろう。

 

 


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