エピローグ

 きっと作者に会えば何か変わると思っていた。

 世界が180度ひっくり返って、他人にない作品が書けると思った。


 今までの人生に自信が持てると思ったんだ。



 小言を嫌った後輩に小言を吐いた。

 前よりもよそよそしくなった本屋の景色には反吐が出る。

 

 振り出し。小説なんてちっさい世界で俺はまた手足を振り回す。

 PVもロクに稼げちゃいないのに、それでもこの作品が一番だと信じ続けて。


 悔しい。


 

「逃げるんだ。吟ちゃんと一緒に暮らす」


「へー」


 久しぶりに会った雲雀ヶ丘は先に進んでいるようだった。

 それが間違ってるかどうかなんて分からない。ただ楽しそうで羨ましかった。



 喪失感だけが俺の体には詰まっていた。

 こんなにも人と会って、何かに傷ついたのに、手元には何も残っていない。


「……翻車魚」


 これをどうこうする気分でもないし、渡す相手もいない。

 俺は本棚にコイツを差し込み、パソコンの電源を付ける。



「もう結果出てんだ」


 以前送るはずだった新人賞のサイト。

 もう既に入賞作品をデカデカと掲載していた。

  

 片手に顎を乗せ、もう片手でページをスクロールする。土俵にも立ててないなんて大した負け犬具合だ。そして――案の定なろうばっかりだ。



 キーボードに手を掛ける。

 肺にある余りある空気を吐き出す。


 何を書けばいいのか……。


 最初の一文如きで何時間も悩むのは不毛だ。

 だから、それでも、ただただ書くしかなかった。

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