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シーン㉙
颯太と陽菜が買い出しに行って、少しした後にゴミ袋も残り少ないことに気づいた。
大輔が颯太に連絡しようとするが、それを澪が止めた。
「私が行ってきて合流するよ!」
澪が2人を見つけた時、もう帰ってくる途中だった。
「おーい」
澪が声をかけようとした時、自転車が勢いよく2人のそばを通り過ぎようとする。
「あぶない!」
その声は届かなかったが、2人は無事だった。
だが、避けた拍子に抱き合う形になってしまうのを目撃する。
「浮気か!」
と後で颯太をいじってやろうと思ったその時。
あれは陽菜からだっただろうか。
思考が追いつかない。
初めて記憶障害で良かったと思った。
朝起きたらこんな記憶消えている。
でも朝起きてもその姿は鮮明に浮かび上がる。
颯太と陽菜が唇を重ねていた。
それから1週間が過ぎた。
世間では年が変わり新しい時代へと動き出す中、澪だけは前の年に、記憶に取り残されていた。
居てもたってもいられなくなった澪は、颯太から誘われた初詣を断り、澪を呼び出した。
「どうしたの?珍しい。」
記憶には無いが、確かに自分からは誘わないだろう。
澪は思った。
「キス、」
したかどうかの確認。
した場合、事故かどうかの確認。
事故じゃない場合、どっちからなのかの確認。
陽菜からの場合、何故かの確認。
そして何故、話してくれないかの確認。
聞きたいことがありすぎて、思わず単語だけを発してしまう。
それを聞いた陽菜の表情はハッとしていた。
クリスマス会が終わり、陽菜と澪は二人きりになった。
「…あんた、どうしてあんなことしたの?」
澪の言葉に、陽菜は弁解しようとした。しかし、二人は気づけば喧嘩になっていた。
「…澪、あんた、保護者面してうざい!」
「何言ってるのよ! 陽菜ちゃんは私がいないとダメなんだから!」
お互いに本心をぶつけ合う二人。
「どうせ、今日の喧嘩だって、明日には記憶にないんでしょ! あんたはいいよね、言いたいことだけ言って…!」
陽菜の言葉に、澪は何も言い返せなかった。
「…あぁ、そうですよ! この際だから全部言いますよ!」
陽菜は、そう言って、今まで心の中に秘めていた想いを全て吐き出した。
「…悪口の途中から、陽菜ちゃんのことが大好きだ、感謝しているという本音も出てくる」
お互いに言い合っているうちに、二人は仲直りをした。そして、澪は、少しだけ微笑んで、陽菜に言った。
「…私、決めた。手術を受ける」
その言葉に、陽菜は驚いた。
「…結果がどうなっても、私には陽菜ちゃんがいるから」
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