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シーン㉘

クリスマス会は大いに盛り上がり、飲み物や食べ物が足りなくなってきた。


「お開きにする?」

颯太の提案を澪が却下。

「まだまだ夜はこれからっしょ!」

少しチャラついた継続宣言を叶えるべく、颯太は追加の買い出しに行くことにした。


「私も行く。」

手を挙げたのは陽菜だった。


ちょうど良かった、聞きたいことがある。

と颯太は思ったので断らなかった。


「いってらっしゃーい」

ご機嫌な姫のお見送りを受けて2人は買い出しに出た。


しばらく歩くと「あのさ」2人同時に声をかけた。

お互いにお先にどうぞと譲り合い、先に折れたのは颯太だった。

 

「澪の様子おかしくない?」

澪は普段から明るい性格だ。

しかし、この日は明らかにいつもよりテンションが高かった。

お姫様のように甘えるのも慣れてきて出た本性なのかとも思ったが、颯太は違和感を感じていた。


同時に話しかけた時は緊張気味だった陽菜の表情がいつもの厳しいお姑に戻った。


「澪からは口止めされてたんだけど」

その切り出しに颯太は覚悟をして息を飲んだ。


「実は澪の記憶障害が治るかもしれないの。」

「ほんとに!?」


颯太は嬉しくも寂しい気持ちに襲われた。

記憶障害が治ることはもちろん嬉しい。

しかし、記憶障害の中で過ごす澪とのな時間を自分だけのものだとも思っていたからだ。


澪は可愛いし、性格もいい。

記憶障害が無くなれば、間違いなくモテる。

いや、今もモテているのだろう。

でも今の澪の隣に颯太がいれるのは記憶障害を受け入れて共に乗り越えようとする姿勢ではないかと颯太は思っていた。

それがなくなれば、澪にとって隣にいるのは颯太でなくても良くなる。


そして同時に違和感が増した。

あのテンションの上がりようはただ嬉しいというものだけではないと思ったから。

 

颯太はその違和感を正直に陽菜に伝えた。



 


クリスマス会の途中で、ケーキの材料が足りないことに気づいた。俺と陽菜が買い出しに行くことになった。


「買い出し、二人だけで行くなんて、ずるいじゃない!」


そう言って、澪は追加要員として、俺と陽菜の後を追ってきた。


三人は、賑やかな商店街を歩いていた。その時、後ろから自転車が勢いよく向かってきた。陽菜は、自転車を避けるために俺の腕を強く掴み、抱きつくような形になった。


その瞬間、陽菜は俺にキスをした。


陽菜は、すぐに俺から離れると、「ごめん」とだけ言って、その場から走り去ってしまった。俺は、突然の出来事に何も言えずに立ち尽くす。


しかし、陽菜のキスを目撃していた澪は、俺たちのやり取りを見て、なぜかダッシュで帰ってしまった。


その日の夜、澪はいつになくそっけない態度だった。俺は、陽菜のキスを目撃してしまったからではないかと、不安な気持ちで彼女を見ていた。

 

 

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