第六章 35分のクリスマス
ページ26
シーン㉖
高瀬彩花には彼氏がいた。
藤原大輔。
顔はもちろん性格もよく、自慢の彼氏だった。
彼女である彩花にはもちろん優しいが、友達思いなところも魅力的だった。
でもある日、彩花の女の勘が働く。
いつも楽しそうに話している颯太くんの話に恋の匂いを感じた。
そしてある日から会話に出てきた颯太くんの彼女
「澪」の存在をする。
彩花は嫉妬した。
もしかしたら恋の匂いは澪に対する物ではないかと。
でも友達の彼女だし、私もいるし。
第一、大輔はそんな人じゃない。
だから澪を煽ってダブルデートを決行した。
真実を確かめるために。
案の定、澪と2人きりにすると楽しそうに話していた。
でもその顔は恋をする相手に向ける顔というより、
彩花と話している時と同じ顔だった。
先に観覧車を降りた大輔が、こちらのゴンドラを見る。
見ていたのは彩花ではなかった。
そこで気づいた。
彩花の恋のライバルの存在は、大輔自身も気づいていない。
いや、気付かないふりをしているのではないかと。
12月に入った。
すっかり冬で、吐息が白く吐き出される季節。
そこでばったりと大輔に会った。
別れてから初めて2人で歩く。
別れは彩花から告げた。
しばらくは街頭によって生み出された2つの影が、静かに進んでいた。
専門学校最後の日、俺と大輔は並んで歩きながら、バイト先のカフェに向かっていた。
「最近、彼女とはどうか?」
大輔の言葉に、俺は少しだけ言葉を詰まらせた。ピクニックの帰りに澪の父親に会ったこと、そして彼から言われた警告の言葉を、大輔に話した。
大輔は、黙って俺の話を聞いていたが、やがて、優しい口調で言った。
「…俺はこれからも、お前の親友だからな」
大輔の言葉に、俺は胸が熱くなった。ピクニックで告白されたことに対して、まだ俺は答えを出せていない。そのことに申し訳なさを感じていたが、大輔はそんな俺の気持ちを察して、穏やかに笑った。
「お前が澪の話をする時の顔を見てたら、勝ち目なんてねーわ」
その言葉に、俺は心の底から「こいつが友達でよかった」と思った。
バイトが終わると、店の前には大輔のことを待っている彩花がいた。彩花は、大輔の俺への気持ちに気づいていたという。
「まあ、あんたが良いなら、また恋人になってやってもいいよ」
彩花は、少しだけ拗ねたような口調で言った。大輔は「振られた弱みに付け込みやがって」と文句を言いながらも、どこか嬉しそうな顔をしていた。二人は、冷たい冬の夜空の下を、寄り添うようにして歩き始めた。
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