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シーン㉔

颯太と大輔、澪と陽菜。

変な組み合わせの歪なピクニックは颯太にモヤモヤだけを残して終わりを迎えた。


颯太と澪は2人で帰路に向かっていた。

この日は珍しく、陽菜が着いてくるとは言わなかった。


デート終わりは「今日は楽しかった」と絶対言ってくる澪もこの日は黙って帰っていた。


嵐が去っても被害は残る。

それでも嵐が去ったという事実に颯太は少しホットしていた。


でも颯太は知っていた。

「何か」ある時はとことん「何か」が続くことを。


嵐の後の静けさも束の間だった。


「澪。」

帰路の途中、1人の男性が澪に声をかける。


細身でなかなかの長身。少し白髪の交じる髪。

優しそうな顔は「年齢より若く見えます」と年齢も知らないのに出てきそうな印象を持たせる。


でも颯太には何となく分かっていた。

この人物が誰なのかを。

そして自分にとってのソレの年齢を考えるとやはり若く見える。


「初めまして、笹川澪の父です。」

 

やはり颯太の予想は当たっていた。

「初めまして、」

その続きに戸惑った。


澪の他の知り合いなら迷わず「彼氏」と名乗るだろう。

しかし、相手が相手だ。

 

澪の事情も考えると、ぽっと出の男が「彼氏」なんて名乗ると、この優しそうな顔も般若に変わりぶん殴られるのではと颯太は息を飲んだ。


「望月颯太くんですよね?」

颯太の作った静寂を切り裂いたのはお父さんの方だった。


「君のことは澪の日記を見て知っています。」

当然のことだった。


娘が35分しか記憶を引き継げないとなると俺でも日記は確認すると颯太も思った。


それと同時にもしかしたら今までの澪への猛アタックもバレているのではないかと颯太は恥ずかしくなってきた。



 

ピクニックからの帰り道、俺は澪の父親に会った。


「…澪に深入りしないでくれ」


澪の父親は、真剣な顔で俺に言った。俺は、その言葉に、胸が締め付けられるような思いがした。


「澪は、昔は泣き虫だったんだ。でも、病気になって、俺たちが泣くことが増えると、よく笑うようになった。…でも、その笑顔は、無理やり作った笑顔なんじゃないかと、俺は不安なんだ」


父親は、辛そうにそう言った。そして、最後に俺にこう言った。


「彼氏など、今後、絶対に認めない」


俺は、何も言えずに、ただただ頭を下げるしかなかった。


しかし、俺には、澪の父親の言葉が、少しだけ違って聞こえた。俺と話している時の澪の笑顔は、無理やり作った笑顔ではなく、とても自然で、本当に楽しそうに見えた。


だからこそ、記憶が持てない澪といて、俺が辛く感じた時、澪は人一倍悲しむだろう。颯太には言わないが、父親はそう感じていた。

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