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シーン㉒
芝生の上に広げられた色鮮やかなチェック柄のシート。
その上に次々と置かれていくのは、手作りのサンドイッチや果物を詰めた籠、まだ湯気の残るポット、そして陽の光を浴びてきらめくガラス瓶のジュース。
空はどこまでも澄み渡り、風は心地よく髪を揺らす。遠くでは子どもたちの笑い声が響き、木々の葉がさざめきながらその音を運んでくる。
「さあ、食べよう」
ひとりがそう言って蓋を開ければ、ふわりと広がるパンの香ばしい匂い。
指先でちぎった一切れのパンを口に含むと、不思議と日常の重さが遠くへ吹き飛ばされていく。
空の下で味わう食事は、ただそれだけで格別のごちそう。
時間の流れはゆるやかになり、会話も笑顔も、鳥のさえずりに溶け込んでいく。
それが「ピクニック」という魔法のひとときだった。
そうなるはずだった。
颯太と澪。
先日、おめでたく結ばれたカップル。
そしてそれぞれの友人の大輔と陽菜。
今日はピクニック兼この2人をくっつけようの会だったが、空気は地獄だった。
――時はピクニックの数日前に遡る。
まずは澪が陽菜を誘う。
その時に遊園地のことがバレてしまった。
別に隠していた訳ではない。
しかし陽菜の知らない澪の行動があるという事実が陽菜の保護者心に火をつけた。
さらに次の事件が起きる。
澪の日記を陽菜が見てしまった。
そこには裏作戦であった大輔と陽菜をくっつけよう会の内容が書かれていた。
大輔の内情も書かれており、そんなすぐに恋人を作ろうとする人と付き合うわけないと陽菜がご立腹。
澪が心配だからとキャンプには来てくれたが、まあご機嫌はナナメだ。
特に颯太のことはずっと睨みつけていた。
大輔が場を盛り上げようとするが、陽菜はスルー。
その態度に大輔も痺れを切らし、雰囲気は最悪。
そして現在の有様という訳だ。
颯太も澪もこの雰囲気にタジタジだった。
ピクニックは、芝生の広い公園で開催された。紅葉がとても綺麗で、秋の穏やかな日差しが心地よかった。俺と澪、そして大輔と陽菜の四人。
大輔は、陽菜に対して、あくまで友達としての接し方だった。陽菜も、最初は俺と澪が分かれればいいのに、と考えていたが、俺の優しさに触れ、少しずつ俺のことを認めていく。
「陽菜ちゃん、紅葉、綺麗だね」
俺がそう言うと、陽菜は少しだけ照れくさそうに微笑んだ。
大輔は、ピクニックを通して、ピクニックは楽しいが、陽菜にも澪にも惹かれてはいないことを疑問に思っていた。そして、少しずつ大輔は、俺への気持ちに気付き始める。
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