第五章 35分のピクニック
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シーン㉑
「はぁ」とため息がこぼれる。
「バイト中ですよ〜」
いつしか言われた言葉を颯太はため息の主に返す。
数日前、大輔と彩花が別れた。
大輔から出てきたため息はそのためだろう。
理由は聞いていない。
でも颯太の脳裏には観覧車での彩花の表情が浮かぶ。
友達を励ましたいという気持ちとは裏腹に安堵の気持ちが颯太にはあった。
ダブルデートでの大輔と澪の様子から大輔は澪のことが好きだと思っていたからだ。
でも今、目の前で落ち込む友人に澪への気持ちなど微塵も感じない。
感じるのは彩花への未練と恋人を失った喪失感だ。
そんな友人を目の前にさっきは「バイト中ですよ」なんてイジってみたが、これは前のやり返しだ。
もうイジるための貸し借りはない。
颯太はどうやって大輔を励まそうか考えていた。
そうして最初に出たひと言をあとで後悔することになる。
「すぐいい人見つかるって」
この言葉には責任が伴う。
そのいい人はどこの誰なのか、本当にすぐなのか。
「いい人って誰?」
大輔のもっともな返しへの対応を颯太は持ち合わせていなかった。
「すいませーん」
お客からの呼び出しに逃げるように取りに行く。
今日はやけに客が多い気がする。
颯太は仕事をしながら自分の知り合いの女性を片っ端から思い出していた。
最低条件は彩花よりもいい人だ。
そんな女性はなかなかいない。
まず外見の時点で強すぎる。
彩花は顔はもちろん、スタイルに服装とレベルが高い。
彼女に叶う女性は芸能人、最低でもインフルエンサーレベルだ。
しかしそんな知り合いは颯太にはいない。
「いいや、女は外見じゃなくて中身だ」と颯太は誰にでもなく言い訳をした。
しかし中身も決して悪くない。
澪を煽るような素振りを見せたが、あれはそもそも嫉妬からであって観覧車で見た彩花はとても優しそうだった。
大輔だって煽っている彩花、ブラック彩花はいつもとは違うと言っていたし。
観覧車で見たホワイト彩花が本当の彼女なのだろう。
だとしたらとても良い女性だ。
「だぁぁあ」
颯太は頭を抱えた。
「いい人いるよ、大輔」
バイトの休憩時間、俺は落ち込んでいる大輔を慰めていた。彩花に振られた大輔は、理由がわからず、ただただ落ち込んでいた。俺は、彩花との別れを悲しむ大輔に、少しでも元気を出してもらいたかった。
「そうだ、望月。澪ちゃんの友達の陽菜ちゃん紹介してよ」
大輔の言葉に、俺は少し驚いた。大輔が陽菜に興味を持っているとは思っていなかったからだ。しかし、俺は、大輔が新しい恋を見つけるきっかけになればと思い、ピクニックを企画することにした。
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