第四章 35分の遊園地
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シーン⑪
髪の毛は少しだけ外ハネをさせてみた。
ワックスも久々につけた。
上手く出来ずに一度ワックスを落とす。
1回目にアイロンで作った外ハネは消えたが、2回目のセットはいい感じだ。
服は既に持っている物からお気に入りを選ぶ。
白いシャツに緑の羽織、黒いパンツ。
小洒落た方が良いか、無難にまとめるかギリギリまで悩んだ。
少し早めに待ち合わせ場所に着く。
元々早めに着く予定だったから、それよりも早い30分前。
場所は彼女と初めて会った海辺の道。
分かりやすい場所の方がいいのではと颯太は言ったが、澪がこの場所を選んだ。
この場所に思いがあるのか、もしかして澪も。。なんてことを考えながら彼女を待つ。
海から流れる風はまるで颯太の背中を押すかのように強く押してくる。
風に急かされて1歩前に出る。
顔を上げると目の前に天使がいた。
彼女の服装やメイク、髪型などはいつも通りだ。
でもいつもとは違う。
それはきっとこの状況がそうさせるのだろう。
「望月颯太くんだよね?」
「はい。行きましょうか。」
「お願いします!」
周りから見たらマッチングアプリの待ち合わせにも見える挨拶を交わして颯太たちは目的地に向かう。
今日の目的は水族館だ。
最初こそ緊張したやりとりだったが、澪はすぐに慣れて水族館が見えてくると、コマーシャルの水族館の歌を口ずさんでウキウキしていた。
受付で2人分のチケットを購入して、いざ魚の洞窟へ。
颯太も釣られたのか、コマーシャルの謳い文句を心の中で呟いた。
澪の言葉に、俺の心は高鳴った。「水族館」という言葉は、俺たちが次に会う約束の言葉だった。
初めてのデートの日、俺は朝からそわそわして落ち着かなかった。バイトで貯めたお金で買った新しい服を着て、鏡の前で何度も髪型を直した。まるで遠足前の小学生みたいだ。
水族館に到着すると、澪はまるで子どものように目を輝かせていた。大きな水槽の前で、色とりどりの魚たちを眺め、楽しそうに笑う。その笑顔を見るたびに、俺は彼女に一目惚れした時の気持ちを思い出していた。
「この魚、すごく綺麗だね! 颯太くん、見て見て!」
そう言って、無邪気に俺の腕を掴む澪。その温かい感触が、俺の心をくすぐった。
一日目は、あっという間に過ぎていった。閉館時間になり、俺たちは水族館を後にした。陽菜に言われた「もう会わないで」という言葉が頭の片隅にちらつくが、この幸せな時間を終わらせたくなかった。
「今日、楽しかったね」
帰り道、澪はそう言って微笑んだ。俺は、その言葉を、忘れられないように心に刻み込んだ。
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