第6話:ついに到着! 異世界の「映え」聖地と神様の正体(?)

王都を出てから三週間。ついに、ついに辿り着いた。

巡礼の目的地、北の果てにある「静寂の神殿」。


「聖女様、ご覧ください。あちらが……我らが信仰の源、世界の楔たる聖地です」


カイルさんの震える声に顔を上げると、そこには霧が晴れるように巨大な建築物が現れた。

切り立った断崖にそびえ立つ、透き通った水晶のような白亜の神殿。背後には巨大な滝が流れ落ち、七色の虹が常時かかっている。


(……やばっ。これ、CGじゃないんだよね? 語彙力消えるわ……)


私は反射的にスマホを構えかけたが、隣にいるカイルさんのあまりに敬虔な表情を見て、そっと手を下ろした。ここは、遊び半分で来ていい場所じゃない……一応、建前上は。


■ 聖地潜入! 内部はまさかの「ハイテク」空間?

神殿の巨大な門をくぐると、外観とは一変して、内部は驚くほど静かで、どこか無機質な空気が漂っていた。

そして、祭壇の一番奥。光の柱が立つ場所にいたのは、髭をたくわえたり、生真面目そうな顔をしたりと威厳のある……「神様」……ではなく。


「――よお、遅かったな。今回の巡礼担当か?」


そこにいたのは、宙に浮いた「巨大な青い立方体」……から投影された、やたらとフランクなホログラムの少年だった。


「……え、神様? 妖精?」


「いや、俺はこの世界の『管理システム』のインターフェース。君らが言うところの神ってやつ。ま、お疲れ。ここまでの旅、楽しめたか?」


カイルさんはその姿が見えないのか、隣で「おお、神の御声が……!」と感涙に咽びながら平伏している。どうやらこの「神様」、姿を見てコミュニケーションをとれるのは私だけのようだ。

私は、ここぞとばかりにカバンから「お供え物」を取り出した。


「神様、これ、途中の街で買った『極上蜂蜜漬けのナッツ』。あと、私の世界から持ってきた『のど飴』。……あげるから、私を無事に元の世界へ帰してよね?」


「お、のど飴! 懐かしいな、たまにこっちに来る奴が持ってくるんだよな。いいぜ、ここへの到着と加護更新のスタンプ押しといてやるよ」


ピッと光る。私の手の甲に、一瞬だけ不思議な紋章が浮かんで消えた。

これで王都へ帰れば、私は無事にコンビニの裏に戻れる。


「あ、神様。最後に一ついい? ……ここで自撮りしてもいいかな?」


「いいぞ。一番映える角度、計算してやろうか?」


【数ヶ月後のネット掲示板の反応】

1024:名無しの読者

聖地到着回キターーー!!

神殿の描写、建築学的に見ても「重力制御してないと不可能な構造」とか詳しく書いてあって、SFオタクも巻き込んで大騒ぎになってるぞ。

1030:名無しの読者

> > 1024

> > 神様のキャラが意外と軽かったのも笑ったw 「聖女と神が、のど飴の味で盛り上がる」っていうシュールなシーン、この作者にしか書けない。

> >

>

1035:名無しの読者

「神殿の内部は常に18度に保たれ、微かにオゾンの匂いがした」……これ、データセンターの描写だよな。作者、まさか「異世界=高度文明のなれの果て」説まで考えてるのか?

1038:名無しの読者

作者コメント:

「聖地って、行ってみるとなんか涼しくて落ち着く場所でした。お土産に水晶の欠片(※プラスチックっぽい)をもらいました!」

……そのお土産、詳しく見せてくれ。


神殿の裏手にある展望台で、私はカイルさんと一緒に沈む夕日を眺めていた。


「聖女様、これで使命は果たされました。あとは王都へ戻るのみです」


カイルさんの横顔は、旅に出た時よりも少しだけ穏やかに、そして……少し寂しそうに見えた。


「そうだね。でもカイルさん、帰り道も『観光』は終わらないよ。行きに食べ損ねた、あの湖の巨大ガニ料理、絶対食べるんだから!」


「……ははっ。貴女様には、敵いませんな」


私はカイルさんの笑顔を、そっと心の、そしてスマホのフォルダに焼き付けた。

往復一ヶ月半。私の「空想」の旅は、いよいよ後半戦。

書きたいことが、まだまだ山ほどあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る