第4話:宿がないなら野宿すればいいじゃない

「嘘でしょ……。これがこの国最大のメインストリート、『聖なる巡礼路』の実態なわけ?」


目の前に広がるのは、轟々と音を立てて流れる濁流。そして、無残にも真ん中からへし折れた石造りの橋。

どうやら数日前の豪雨で流されてしまったらしい。


「聖女様、申し訳ございません。修復には魔術師団を呼んでも数週間はかかるかと……。やむを得ません、迂回路を探しつつ、今夜はこの河原で一夜を明かしましょう」


カイルさんは沈痛な面持ちで頭を下げたけれど、私の心はすでに別の方向へ向かっていた。


(え、待って。これって……『ガチのキャンプ』ができる絶好のチャンスじゃない!?)


■ 女子高生流・異世界野宿のハウツー

普通の聖女なら「冷たい地面で寝るなんて!」と嘆くところだが、私は速攻で袖をまくった。


「カイルさん、落ち込んでる暇があったら動くよ! 日が暮れる前に拠点を確保しなきゃ。まず、地面の石を退けて平らにして!」


* 寝床の確保:

ただ地面に布を敷くだけじゃ、地面の冷気で体温が奪われる(これ、初心者が一番やるミス)。私はカイルさんに命じて、枯れ草と細い枝を山ほど集めさせ、その上に防水加工の皮布を敷いた。これで「天然のマットレス」の完成だ。


* 即席の石かまど:

河原には手頃な石がゴロゴロしている。熱を逃がさないように円形に積み上げ、空気の通り道を作る。


* 異世界版・包み焼き:

「カイルさん、あの崩落した橋のたもとに魚が溜まってる! 捕まえて!」

聖女の命令(物理)で捕獲された銀色の魚を、河原に自生していた香草と一緒にアルミホイル……の代わりに、熱に強い「オオバ(っぽい葉っぱ)」で包んで蒸し焼きにする。


「……聖女様、あなた様は本当に山の神様のお使いでは? 身の回りにあるものの活かし方が大変優れていらっしゃいます。戦場での野営に取り入れたいほどです」

「カイルさん、これは『サバイバル』じゃなくて『レジャー』なの。楽しんだもん勝ち!」


【数ヶ月後のネット掲示板の反応】

820:名無しの読者

最新話の「野宿の心得」、マジで勉強になるわ。

「冷気は下から来る」ってのを強調してるあたり、作者は絶対に冬キャン勢。

825:名無しの読者

> > 820

> > あの「石を焼いて布で包んで足元に置く(即席湯たんぽ)」ってテクニック、真似したらマジで熟睡できた。異世界小説読んでるはずなのに、生活の知恵がレベルアップしていくんだが。

> >

830:名無しの読者

「橋が壊れてる絶望的な状況なのに、川魚のホイル焼きの味について2000文字費やす」の、この作者らしくて大好き。

832:名無しの読者

作者コメント:

「ピンチの時こそ、美味しいものを食べて寝るのが一番です☆ あ、石かまどの跡はちゃんと片付けましょうね!」

……もうこれ、異世界版のキャンプ動画の台本だろ。


焚き火のパチパチという音を聞きながら、私はカイルさんと焼き魚を突っついた。

見上げれば、二つの月が川面に反射して、幻想的な光を放っている。


「……ねぇ、カイルさん。橋が壊れてて良かったかも。こんなに綺麗な月、宿の窓からは見られなかったし」

「聖女様……。貴女様は、どこまでも強く、美しい心をお持ちだ」


カイルさんがまた何か勘違いして感動しているけれど、私はただ、この「不便な贅沢」を楽しんでいるだけだ。

スマホのカメラを「夜景モード」に設定して、焚き火越しに広がる星空をソッと保存する。


「さて、明日は川を上流まで歩いて浅瀬を探そう。カイルさん、夜番よろしくね。おやすみ!」


ふかふかの(自作)ベッドに潜り込み、私は異世界の風の音を子守唄に、深い眠りに落ちた。

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