第5話 女神さまに報告を

「それでそれで! そのあとダンジョンに入ったのですが、いがみ合いながら完璧な連携をしたんです! もう、鼻血出るかと思いましたよ!」


 冒険者養成校の隅にある教会に響く私の声。


「ふふっ、順調のようで何よりです」


 そんな私の報告を聞く、養成校の司祭ナイア様。

 ……もとい、どうやって潜り込んだかわからない女神様。


「それよりアン。今回から、貴女の報告を聞く方法を変えようと思います」

「方法を変える?」

「ええ……というわけで、ショーターイム♪」


 その瞬間、黒い光が辺りを包み、辺りが演劇のステージのように変化する。

 それに合わせ、女神さまの衣装がやたら過激なバニースーツ? みたいな服に変化する。

 ……いや、あれは服なのだろうか?

 はっきり言って全裸より恥ずかしい衣装なんですけど。

 それにしても、無から、服も、ステージも創り出すとか、本当にやりたい放題だ。


「では、アシスタントさん! 採点スタート♪」

「イエース! チクターク!」


 そして、どこからともなく現れたか歯車ベースのゴーレムに指示を出す。

 歯車ゴーレムが近くのボタンを押すと、これまたどこからともなく巨大な鏡みたいなものが現れ、数字が映し出される。

 数字は徐々に数が増えていき、最終的に40となる。


「昨日までの、勇者と魔王の百合ポイントは40ポイント! 100ポイントになったとき、ふたりは固い絆で結ばれまーす♪」


 いや、本当にノリノリだなこの女神様。

 正直言うと、多数の『怪奇現象』の前に正気を失いそうなのだが、もう考えないことにしよう。


「ではでは、今日のアンの行動によって、ふたりがどう変化したか、ポイントを見ていきましょう♪」

「イエス、イエース! レッツ、チクターク!」


 そして、ノリノリの歯車ゴーレムがまたボタンを押す。

 もう本当に意味不明だが、女神様の言葉で内容は理解した。


(つまり、今日の私の行動で、ふたりがどれだけ進展したかが分かるってことだよね?)


 昨日までは、40ポイント。

 そして、今日の行動でポイントが変貌するので、それで進捗確認というわけだ。


「ふふっ、あなたのように勘のいい子は大好きです♪」


 当たり前のように私の隣に瞬間移動し、当たり前のように私の心を読んでくる。

 もう本当になんでもありだな、この人。


(ということは、今回はポイントアップ間違いなしだよね!)


 ふたりの百合を見た私なら断言できる。

 あれは確実に決まった! 最低でも80ポイント、いや、100だって狙える!


 そんな私の願いを受けながら、鏡に映し出される数字。

数字は徐々に増えていき、最終的に映し出された数字は……!


「……25ポイント、ですね」


 ――遠くで響いてくる、時間を知らせる鐘の音。

 聞きなれた音だが、なんかいつもより大きく聞こえる。


「……こんな日もあるぜ。気を落とすなよ、お嬢ちゃん」


 歯車ゴーレムが私に声をかけ、歩いて去っていく。


 ……いや、急に普通にならないでよ!

 出てきたときは謎理論なのに、帰るときは普通に歩いて帰るの!?


 心の中で、色々なツッコミが生まれたけど、それどころではない。


「…………」


 私の横から、とんでもない怒りのオーラを感じるのだ。

『ふふっ、こんなに無能だったなんて、どうしてくれましょうか?』

 そんな空耳すら聞こえてくる。


「……ふふっ♪」


 音もなく、私の目の前に現れる女神様。

 まるで、心臓を直接掴まれているかのような恐怖。

 やっぱりこの女神様、邪神の類じゃないだろうか。


「安心してください、アン。私は全然怒ってませんよ?」

「ほ、本当に……?」

「あなたは私の協力者……そんなあなたに、何かするわけないですよ♪」


 良かった……私、ちゃんと生きて帰れる!

 歓喜する私の耳元に……


「……でも、ちょっとだけお仕置きはしないとね?」


『邪神』の囁きが響く。


「い、いやぁあああああああ~~~~!!」


――そして私の、恐怖そのものともいえる叫びが響き渡るのであった。


********************


 ……ちなみにお仕置きは、痛い系じゃなかった。

 内容は、一週間指定されたパジャマで寝るというもの。


「ア、 アン……?」

「えっと……個性的なパジャマね……」


……女神さまが着ていた、逆バニーとかいうとんでもないパジャマに。


(次は絶対に、最高の『フラグ』を作ってポイントアップしてみせる! 世界を救うために! そして、最高の百合を見るために!)


 屈辱を味わいながら、私はまた早朝フラグ建築のために寝るのであった。

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