第3話 勇者と魔王の力

「――ひゃうっ!」

「あ、寝てなかった」


 実習中、女神様のことを思い出してぼーっとしていた私の胸が突かれる。


「……自習中に、他のことを考えている貴女も悪い」


 なんでエリスを止めてくれなかったの? と恨めしそうに見た私に、手痛い返答をするルミナ。

 性格といい、生真面目な一面といい、本当に経典(百合漫画と呼ぶらしい)に出てくる先輩そっくりだ。


「あたしを悪者にしてるけど、ルミナだってやりたそうにしてたじゃん」

「私があんな変態行為を? 貴女と一緒にしないで頂戴」

「あんなにソワソワしながら、涎たらしといて?」

「ちょっ、変なこと言わないで! ……し、してないから! してないからね、アン!」


 仲が悪いように見えつつも、どこか絆を感じるふたりの会話を聞いて、私は嬉しくなる。

 世界を救う使命もあるし、ふたりのイチャイチャが見たいんです! という欲望もあるが、それ以上にふたりは大切な友達。

 大切な友達が仲良くしてくれるのは、本当に嬉しい。


「あの、ぼーっとしていた私が言うのもなんだけど、もう少し真面目に瞑想した方がいいんじゃない?」

「……まー、分かってはいるんだけどさー」

「…………」


 バツが悪そうに空を仰ぐエリスと、目を逸らすルミナ。


(……そっか。ふたりはもう、ずっと瞑想しかしてないんだっけ)


 ふたりの力……勇者と魔王の力は、世間では謎の能力でしかない。

 だから講師も基礎課題しか出せず、ふたりはずっと瞑想しかしていない。

 他の子が、4大元素の勉強で盛り上がっているときも、魔法が使える喜びを分かち合っているときも、ずっと……


「……ねえ、ちょっと訓練用のダンジョンにいってみない?」

「え、本当に!? ふたりで行こーよ、アン!」

「……そんな行為を、私が見逃すと思っているの?」


 私の言葉に目を光らせるルミナ。


「貴女がダンジョンに行ったら、ゴブリンに連れ去られて、酷い目に遭うだけよ」


まあ、ルミナならそう言うよね……でもここは、ふたりを『外』に連れ出すためにも、なんとか押し切る!


「えーと、だからふたりで守ってくれると……ダメ?」

「…………っ!」

「はい、ルミナの負けー。本当は行きたくてしょうがないんでしょう?」

「…………ふんっ」


 エリスの助け舟のおかげで、ふたりは立ち上がってくれる。


(良かった……いつものふたりに戻ってくれた)


 やっぱり、友達の辛い顔はみたなくない。


(……でも、私の目的は、それだけじゃないのですよ!)


 そう、私には別の目的がある。


(さあ! 百合フラグ職人の力、見せるときが来た!)

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