終章

    大学生活を充実したものにするために、乗り越えなければならないハードルが三つある。一つは人の視線、もう一つは人混み、最後は助けを求めること。私は相変わらず、人の視線が苦手で、人混みを避け、素直に人を頼れなかった。けれど、意外と他の人も視線を気にしていて、人混みは嫌で、人を頼れず、不器用に生きているのだと気づいた。それだけでも、私にとっては大きな収穫だ。

 今日も私は鏡台でにらめっこしていた。どうしても目に生気が宿っていない気がしてならない。ただ、もともとこんな目だった気もする。そう考えると、一つの可能性が浮上する。もとから元気のない目をしているのなら、メイクの仕方次第で何とでもなるのではないか。これからはアイメイクを磨こう。

 鏡に向かって笑ってみると、やっぱりどこかぎこちなくて、苦しそう。でも、もういい。それより、腫れは引いてきたとはいえ、みちちゃんに殴られた頬がまだ痛い。笑顔がぎこちないのもそのせいだ。まあ、それも何でもよかった。みちちゃんも私のせいで右の掌を縫った。お互い傷だらけ。そろそろ、行かないと遅刻する。みちちゃんに怒られる。

 そうそう、れでぃ・冥土は約二年の沈黙を破って二つの絵を投稿した。一つは晴れ渡る草原に浮かんだ扉の絵、もう一つはその扉が開いていて、何も置かれていない部屋があるという絵。れでぃ・冥土はこの投稿で初めて文章を添えた。それは一言。

『れでぃ・冥土はくたばらない』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

れでぃ・冥土はくたばらない 入間しゅか @illmachika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画