第2話

「死んでいますね。」


 私がそう呟いた通り、目の前の「少女だったモノ」に命はない。

 川を流れてきたのは確実で四肢の損傷は激しく、骨が見え隠れし皮膚は変色して、おまけに直前まで鳥に啄まれていた事から分かる通り、片方の眼球は失われている。あと少し遅ければ両目とも鳥のおやつだっただろう。片方残ってるからなんだという話だが。


「ああ、これは…」


 死体の股…まあ言ってしまえば女◯器は裂けてズタズタになっている。つまりはそういう事だ。


 残念ながら、この世界では幼い女児の性奴隷などありふれている。

 貧しい村が口減らしも兼ねて子供を奴隷商に売り飛ばし、買われた先で壊れて使い物にならなくなった後、ゴミのように…いや、その「ご主人様」にとっては言葉通りゴミなのだろう。不法投棄の粗大ゴミのように捨てられているのを何度も見た事がある。よくある事だ。

 そういうのは大抵魔物の餌になる。環境にやさしいね。大変結構な事だ。


 正直に言うと、私はそれについて可哀想だと義憤に駆られたりはしない。

 ゴミが虫を飼って壊して捨てているというだけだ。感情は動かない。


 この世界の人間どもは基本的にどうしようもなくクソだ。

 人を殺してはいけません。人の物を盗んではいけません。たったこれだけのことが守れない。大多数がだ。

 そりゃ魔物という脅威がいて文明レベルも低いから仕方がないといえばそうなのだが、それでも私には到底、異世界人が自分と同じ人間とは思えない。いや、いつの間にか思えなくなっていたのだ。



閑話休題。



 さて、この目の前にある無惨で哀れな死体をどうしようか。

 このまま放置して鳥か魔物の餌になってくれてもいいが人間の素材…それも幼い子供の素材は研究用として少々魅力的だ。能動的に集めようとすると私の美学に反する行いをしなければ中々厳しい。

 これは損傷が激しいがおそらくまだ臓器は無事なのがいくつかあるだろうし眼球も片方ある。


「まあ、とりあえず持って帰りましょうかね。」


 私がその死体を回収しようと手を伸ばした時─


 目が合った。


 …ような気がした。


 そっと死体に触れる。おかしい。


 いや動いてはいないはずだ。死んでいる。


 私は耳を死体の心臓の位置に当てる。生命感知、魔力感知共に反応がないので意味の無い行為だが、思わず直接確認したくなってしまった。


 やはり心臓は止まっている。


 おかしい。


 これは不可解だ。なぜ?



 なぜ私は死んでいる彼女を「治せる」と思ったのだ?

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