人でなしの美少女育成ゲーム(異世界版)

黒猫猫

第1話

 私、エイン・ハワードは転生者であり性格破綻者である。


 …自分でこういうのを自称すると中二病の痛い人だと思われてしまうかもしれないが、少なくとも私は一般的な人間の感覚からは逸脱しているらしい。

 というのも、まず人を殺したり痛めつけたり、苦しむ姿を見て快感を覚えるという点でもう察して然るべきだろう。


 もちろん平和な法治国家日本で生きていた頃はそんな猟奇的な本質は心の奥に仕舞い込み、ごく普通の一般人として過ごしてきた。犯罪なんて一度も犯してはいないし他人に暴力も振るったこともない。


 しかし異世界、それもドブカスのように人権を掃き捨てられるような世界に転生し、初めて人を…山賊を殺めた際、私は気がついてしまったのだ。


 人を殺すのは、すンげええええええええキモチガイイということに。

 いや、正確には「殺す事」ではなく「暴力」はとても気持ちが良いということにだ。


 とまあそんな気づきを得たのはもうかなり昔になる。数えていないので正確には分からないが二百年は前の事だ。

 もう転生前の模範的道徳心を持った自分を思い出す事すらできない。


 そんな私は現在何をしているかというと


「次の方どうぞ。」


「いたた…屋根の修理してたら足を滑らせちまって、すまんが先生、たのんますわ。」


 無精髭を生やしたアラフォー男性が腰を押さえて痛そうにしながら「先生」と呼んだ、その灰色髪の胡散臭そうな若い男。田舎町の教会で治癒士の真似事をし、そこそこの稼ぎを得ているのが現在の私である。


 え、快楽殺人者に治療なんかできるのかって?できますよ普通に。

 そもそも私は暴力に快感を覚えるだけでそれに依存しているわけではない。タバコより余程依存性は低いだろう。

 たまに「治すに値しないゴミ」を処分したりするくらいである。


 昔こそ大量にクズの異世界人を殺してまわっていたが、あまり同じ事を繰り返していると飽きてくるものだ。そういうのはもうお腹いっぱいだ。


 そんなわけで午前と午後、二時間ずつの診療を適当に終えて私は帰路に着く。私の家は町から離れた所にあり、徒歩で2時間ほどの森の中だ。

 とはいえ、馬鹿正直に歩いて2時間かけるわけもないので認識阻害と加速の魔法であっという間の帰宅となる。


 おっと、忘れるところだった。仕事前に川で冷やしておいた竜血無花果を回収して帰らねば。

 竜血無花果は真っ赤な血のような果汁を持つ果物で、劇毒だか私は味が好きなのでよく食べている。毒など効かん。川で冷やすと良い感じに渋みも取れて一石二鳥なのだ。多分アク抜きになっているのだと思う。


 あまり人目に付かない川岸を選んで置いてあるので少し歩き、その場所を目指す。


「ん?あれは…」


 何かある。鳥が群がっているのは遠くからでも確認できたが、隙間から見えた物が物なので私は急いで近くに寄って確認する。


 バサバサと音を立てて、それに群がっていた鳥たちが一斉に飛び立つ。


 果たしてそれは生きているのかいないのか。


 なるほど、これは…




「死んでいますね。」






 そこにあったのは、川岸に無惨にも打ち上げられた、幼い少女の死体だった。


 冬入り目前の冷えた空気と、朱に染まり始めた空が、私を包み込んでゆく。

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