第9話 お嬢の家族

 幼い頃は魔力量が多すぎて制御できなかった。感情の揺れが大きくなると、無意識で炎がチラついたりする。

 それで他者を傷付けないように、別邸でひっそりと暮らしながら魔法操作の特訓をしていた。幼い頃からブレイズ様に付いている従者は、よく火傷をしていた。

 前の時のこの年齢だと家族に近寄れなくて、別邸で一人暮らしていたんだ。

 ホルハティ家は代々魔力量が多い家系だが、その中でもブレイズ様は特出している。

 その所為で幼い頃は、可愛い妹に近寄れなかった。制御できるようになってからは、反動なのか妹を溺愛している。

 将来は最年少で、しかもトップの成績で魔術師団に入団する。お嬢がキレちゃった時も、お嬢の魔力をいち早く感じとり駆け付けて来た。


「ブレイズちゃま、まりょくせいぎょ魔力制御、いちゅのまにできるように、なったのでちゅか?」

「え……?」

「ブレイズちゃまは、まりょくがおおくて、せいぎょできないからと、かぞくとはなれていたはじゅら」


 ほら、よ〜く考えてみな? おかしなことが、色々あるだろう? 何より、自分が経験したことのない未来の記憶があるだろう?


「ベル……じゃあこの記憶は真実なのか? 夢ではないのか?」

「だんなちゃま、ちんじちゅ真実だ。ほんとうに、おれがときを、まきもろち戻したんだ。うまくいってよかったじぇ」


 そういいながら俺は、どうだ! と小さな胸を張った。俺じゃないとそんな魔法は使えないぜ。

 その時またポコンとゲンコツを落とされた。


「おやじ、なんだよ! イッテーな!」

「旦那様に何て言葉使いしてんだ! また一から教えないといけないのか!?」

 

 めんどくせー。俺はドラゴンの国で育ったから、この国の身分とか関係ないんだよ。と思いながら、また親父にげんこつを落とされるのは嫌だから言葉を治す。


「あのときは、ちょうちゅそうするちか、なかったんでちゅ」

「ベルは私たちのことを考えてくれたのね?」

「あの時、城は惨状だった。取り敢えずあの場を収めたとしても、私たちにどんな罰が下るか分かったものじゃない」


 そう言って旦那様は、ふぅ~と大きく息を吐いた。

 旦那様はフランヴァ・ホルハティという。この国で四家しかない公爵家の当主だ。

 その四家の中でも、物腰が柔らかく考え方も柔軟で差別もしない。

 だからこそ、俺なんて従者になれたのだろう。でないと竜人なんて、また奴隷商にまっしぐらだ。

 きっと旦那様と深く付き合ったことのない人は、穏やかな紳士だと思っているだろう。

 だけど、公爵家の当主と国防大臣の任を立派に務めているのだから、そんなわけはない。穏やかだけではやってられないこともある。

 俺は旦那様がこの家で一番の腹黒さんだと思っている。旦那様に仇なす者には容赦ない。

 白銀の絹糸のように癖のない髪を後ろで一つに結んでいて、深紅の瞳をしている。その深紅の瞳は、炎を司る証だ。

 そんな旦那様の隣で、奥様が目尻を下げて悲しそうな顔をして聞いてきた。


「ベル、その所為であなたは奴隷にされてしまったの?」

「おくちゃま、ちげー違う


 そうじゃない、奴隷になったのは俺の不注意だ。そこは気にしなくて良い。

 奥様は、アグニール・ホルハティという。侯爵家の次女で、旦那様とは幼馴染でもある。

 火属性魔法を使える令嬢の中から選ばれて、ホルハティ家に嫁いだことを誇りに思っている。

 ホワイトブロンドのフワリとした髪に赤茶色の瞳をしている。奥様だってかなりの火属性魔法の使い手だが、それでもホルハティ家には及ばない。ホルハティ家の炎は、それだけ威力も規模も違うんだ。

 社交界では旦那様とはおしどり夫婦とか、似たもの夫婦とか言われている。

 奥様も人当たりが良く、黙っていれば穏やかに見えるんだ。

 だけど奥様もそんなわけはない。公爵家に仕える大勢の使用人たちを仕切っていて、立派に社交も熟す。そんな人がただ穏やかなだけのはずがない。腹黒さんナンバー2だ。

 だけど、俺たちにはとっても優しいから俺は好き。


「奥様、そこはベルの不注意なのです。お気になさらず」

「そう? そうなの?」

「だけど、じい。ちょっと時を戻しすぎだと思わないか?」


 おっとお嬢の兄、ブレイズ様が鋭いことを言った。爺とは親父のことだ。お嬢やブレイズ様からは、爺と呼ばれている。


「ベル、どうなんだ?」

かげん加減が、できねーんだ」

「こら、ベル」


 おっと、また親父にげんこつをお見舞いされるのは嫌だ。


「おれも、ちゅか使ったことのない、だいまほう大魔法だから」

「ああ、だから加減ができないということか」

ちょうでちゅ」

「ドラゴンとは、我々の想像を超える魔法が使えるのだな」


 ふふふん、そうだろう? 人にはあんな大魔法は使えないからな。


「父上、でもベルはまだチビドラゴンです」

「うるちぇー」

「こら、ベル」


 また親父に叱られちゃった。だってブレイズ様が突っかかってくるんだもの。

 さて、状況は整理できた。なら、これからどうするのかだ。

 そう考えていたのに、ここで旦那様が爆弾を落とした。


「ネネ、一週間後に第2王子殿下との顔合わせを兼ねた王妃様主催のお茶会がある。我が家も招待されている」

「おとうちゃま、いきたくないでちゅわ」


 お嬢がやっと涙の止まったウルウルした瞳で、すがるように旦那様を見つめた。




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本日二話目です。

2月まではちょっと頑張って複数話投稿できればと思います。

ロロちゃんの加筆もしなければ締め切りがぁッ😨

よろしくお願いします😊


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