第7話 考察


 ───


 帰宅する。


 靴を脱ぎ、鍵を置く。

 照明を点ける。


 人形たちは、配置されたまま動かない。

 視線は合わない。

 合う必要もない。


 問題はない。


 上着を脱ぎ、椅子に掛ける。

 立ったまま、今日の行動を整理する。


 攻略者としての初行動。

 講習担当者との同行。

 初心者用ダンジョンでの実地確認。


 得られた情報は、想定どおりだ。


 移動系DE。

 干渉系DE。


 どちらも、動画や資料で把握していた範囲を超えていない。

 初心者向けに調整されている分、発現も安定している。


 使用しなかったことによる支障はない。


 むしろ、

 素の状態での挙動が確認できた。


(身体負荷なし)

(工程短縮なし)

(管理効率に影響なし)


 初心者用のダンジョンで得られるものは、

 この程度だ。


 講習担当者の反応を思い返す。


 説明。

 誘導。

 補助。


 それでも、使わないという選択を理解できなかった。


(意図不明)

(判断不能)

(不安定要素)


 人は、

 理解できる範囲でのみ安心する。


 意味を与えられないものは、

 排除するか、

 距離を取る。


 それが、今日の反応から分かった。


 一方で、

 初心者用ダンジョンは安全だ。


 だが、安全である以上、

 得られる情報量には限界がある。


 次に行く場所は、

 もっと人が集まるダンジョンだ。


 人気があるということは、

 多くの攻略者が集まり、

 多くのDEが使われ、

 多くの判断が行われている、ということだ。


 比較対象として、適している。


 ただし、そのためには条件がある。


 攻略者ランクを、上げる必要がある。


 5級のままでは、

 立ち入れる範囲が狭すぎる。


 すぐに上げる必要はない。

 時間がないわけでもない。


 焦る理由は、存在しない。


 回廊内で使われてきたDEは、

 概ね把握している。


(移動)

(干渉)

(感覚)

(制限)


 それらを、

 外部ダンジョンで

 どこまで再現できるか。


 あるいは、

 再現せずに進めるか。


 級をどの程度まで上げられるかは、

 未知数だ。


 だが、未知であることは問題ではない。


 未計測なだけだ。


 測ればいい。


 人気ダンジョンに行く。

 攻略者として、歩く。

 使われているDEを、観察する。


 使う必要があれば使う。

 不要なら、使わない。


 それだけの話だ。


 人形回廊に戻るのは、

 その後でいい。


 あそこは、

 確認と反映の場所だ。


 今は、外を見る段階に入った。


 机の上に、

 攻略者登録証を置く。


 軽い。

 簡素だ。


 今の立場には、十分だ。


 次の工程を、

 静かに組み立てる。


 問題はない。

 母体として引き続き進める。




 ─────────────────────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る