第2話 マラソンと診察券


いつものように、音夢は携帯を睨んでいる。


またか・・・。


銀次は時々携帯の電源を切って、姿を消す。


1週間ほど経ったある日


ピロピロ~ン🎶


音夢はいつもより、1オクターブ低い声で


「どこにいるの?!」 と電話にでた。


「すみません。斎藤銀次さんは今、〇〇署におられます。」


警察署からの電話だった。

驚いた音夢は事情を聞き、

呼吸が浅くなり、震えた。


彼はパチンコで底をつき、

ATMで、おばあちゃんの財布を盗み、全力で走って逃げた。


すると、後ろから、おばあちゃんが追いかけてきた。


早い・・!

お年を召した、よぼよぼのおばあちゃんが、距離を縮めながら

ひと言叫ぶ。


「待って~!診察券だけは返して~」


聞くところによると、おばあちゃんは、元マラソン選手だったらしい。


どおりで早いはずだ。


その叫び声を聞き、勇気ある数人の男性が、彼をとっ捕まえて通報。

そこは、人で賑わう観光地の大きな橋の上だった。

しかも、橋を越えた所に交番所もある。



色んな意味で彼はツイてるように思えた。


おばあちゃんにとったら、お金よりも診察券が大事なのは、よく分かる。


その瞬間、怒りよりも先に、どうしようもない疲れが胸に広がった。



「一生帰ってくるな!」と

心の中で叫んだ。

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