私、すずめちゃんといつもお風呂に入っていたようです

 私がメッセージを送信すると、すずめちゃんからメッセージがすぐに帰ってきた。


『お風呂! いつも一緒に入ってるじゃん……!』

 

 私はそのメッセージを見て固まってしまった。

 

 ……お、お風呂? そういえば、鞄があんなパンパンだったのは着替えとかが入ってたってことか。


 っていうか更紗羨ましいんだけど! じゃなくて、なんで私の家でお風呂入ってるんだろう。


 考えてもわからなかったので、手が震えながらもゆっくりとメッセージを送信する。

 

『なんでお風呂一緒に入りたかったの?』


『私たち二人きりでお風呂に入るのよくしてたじゃん。なんで今日親帰ってきたの?』


 なんでって言われても、親がいないときにしかできないことなんて知らなかったんだもん! でもここで知らなかったなんて言ったら怪しいだろうし……。


『ごめん、予定見間違えてた』


『わかった。じゃあ次はしっかり見ておいてよね』


『わかった』


 そこでやり取りは終了した。


「はぁ……」


 私はすぐにベッドに倒れこんで大きくため息をついた。


 こんなの知らなかった、少なくとも私が知るこの世界では。つまりこの世界は、私の知る世界だけではないということ。


 *


 ピロン。


「ん?」


 お風呂から上がったばかりで部屋でゆっくりしているとき、ふとスマホから通知が鳴った。


『今暇?』


 栞ちゃんからだった。


 そういえば今日の夜に話す約束してたよね、それかな。


『今は暇だよ』っと。


 そして送信した瞬間――。


 プルルルル。


「うわっ!?」


 スマホのバイブ音に思わずスマホを投げ出してしまった。そして恐る恐る画面を見ると、やはり栞ちゃんだった。


 電話、私が前世親以外としたことのない恐怖の機能。


 私は出ないわけにも行かず、恐る恐るスワイプした。


「あ、あー聞こえてる?」


「え、あ……。うん聞こえてる」


 スマホから栞ちゃんのいつも聞いている声とは少し低い、優しい声が聞こえる。電話だからか、かなり新鮮に感じる。


「なにその反応、電話したことないみたい」


「ないからね」


「え!? そうなの、大丈夫だった?」


 私がさらっとそう答えると、信じられないと言わんばかりに声を大きくした。


「大丈夫だよ、栞ちゃんは慣れてるんだね」


 笑いながら私がそう言うと、栞ちゃんも少しだけ笑って答えた。


「実は私も親以外としたことなくて初めてだよ」


「じゃあ一緒じゃん……」


 ベッドに横たわって苦笑する。


 栞ちゃんが電話したことないのは原作に明記されていないけど、大体想像はつく。


「そういえばなんで電話?」


 ふとそんなことを考えて訊く。


「んー、メッセージより話しやすいし、声聞きたかったから?」


 メッセージより話しやすい。というのは分かるにしろ、私は『声が聞きたかった』という言葉に耳が奪われた。


 声が聞きたかったって、そんなの私がモブじゃないみたいなこと言われても……。


 私は軽く「そっかー」と流し、すぐに話を変える。


「そういえば話したい事って?」


「ああそうそう、実はあの……今の私どうかなーって……」


「今?」


「うん、前まで人と話さないようにーってしてたんだけど。ちょっと最近頑張ってるんだけど、どうかな」


 照れくさそうな声で、小さく心配そうに訊いてきた。私は脳内で今日の栞ちゃんを思い出す。


「え良いと思うよ、私はどっちも好きだけど」


 私は前のクールというか、静か目の栞ちゃんも好きだ。だけど、明るくて優しい栞ちゃんも大好きだ。


 私がそんな当たり障りのない答え方をすると、栞ちゃんは安心したように声を漏らした。


「……良かったー」


「ん? 良かった?」


「うん、なんか急に話し始めた変な人みたいに見られてないかなって心配だったから」


 あはは、と苦笑して言った。原作ではかなり時間をかけて素を見せていた気がするし、こういう悩みができるのも自然かもしれない。


 それよりも私からしたらなんでこんなに素を出すのが早いのか、っていう方が気になるんだけど……。


 私がそんなことを訊けるわけもない。


「そんなわけないじゃん、それが栞ちゃんの素ならそれが一番好きだよ」


「ふふ、ありがとっ」


 不安が解消されたのか、声が一段階明るくなったように感じた。


「話したかったのってそれだけ?」


「ああ、もう一個…………ってそれは明日会ったとき伝えよっかな」


 明日かい!


「……気になるんだけど、まぁわかった」


「楽しみにしてくれてもいいよ」


「そう……」

 

 からかうように笑う栞ちゃんが少しだけ怖く感じ、そっけなく返してしまう。

 

「うん! じゃ、また明日ね」


「はーい」


 ポロン。


 スマホから通話の終わりを知らせる音が聞こえ、ようやく一息つく。


「はぁ、栞ちゃんに最後そっけなく返しちゃったな……」


 ベッドの上で私はじたばたと暴れながら呟いた。

 

 私は怖気づいているのだと思う。


 少しずつこの世界がズレていることから、目を背けられないような気がしたからだ。


 でも私はあくまでモブだ。私はこの世界でなにも起こさないことを再び心の中で誓った。


 って、それよりも明日の学校だよねー、果たして何を言われるやら……。


「……そうだ! アマナイの誘いもしないと!」


 私はすっかり忘れていたアマナイのことを、由愛の顔が浮かんできてようやく思い出した。


 私は明日のことを色々と考えながら、私は眠りについた。





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【あとがき】

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