原作TOPの可愛さ。

 その方向を向くと、一人の女性が姿を現した。同じくらいの身長に金髪ロングに少し赤みがかった目。


「お待たせ……って、白百合ヶ丘の制服じゃないの。キラキラ女子高生もこんなぼろい店くるのね」


「おいぼろい店って言うな。恋愛相談されたんだが、代わりに受けてやってくんねえか?」


「はぁ、まぁ暇だからいいけど……で、どんな相談?」


 腰に手を当てて、私を見下ろすような形で話してきた。だが私は固まってしまっていた。


 来てしまった。


 そう、この『あの百合』のヒロインの一人――。


 ――秋谷由愛あきたにゆめ


 原作通りの可愛さ、そして強気な言動。


 そう、この秋谷由愛は『あの百合』の作品の人気投票一位を連続で取るほどの人気。付いた異名は『可愛さの暴力』


 普通ならもう少し先で出てきて、あきた屋の店長の娘で、この店もその時に紹介されるはずだった。


「可愛いですね」


「……はっ、ちょ急になに言ってんの!?」


「あ、ごめんなさい。つい本能で……」


「……なんだこいつ」


 ポッと顔を赤くして視線を逸らし、髪をくるくるといじり始める。


 この秋谷由愛は、可愛いや綺麗を言われただけで、にやけが止まらないほどの照れ屋。


 そして主人公に言われた日には夜、ベッドで悶えるという言動からは一切想像できないような可愛さの持ち主だ。


 そして深呼吸をし、私が腰を掛けているベンチに腰を掛けた。


「……それでどんな相談?」


 私は顔をまだ赤らめている由愛にもう一度言いたくなる気持ちをぐっとこらえ、相談することにした。


 結局すずめちゃんたちをくっつけなきゃ意味がないからね、とりあえず相談しておこう。


「実は、かくかくしかじかで…………」


 


「ふーん、とにかくその二人をくっつけたいってことね」


「そうですね……」


 もちろん由愛に原作やら絡みが見たいから、なんて頭のおかしい人と思われかねない言動は省略し、とりあえずくっつけたいという旨を伝えた。


 由愛は顎に手を当てて考えている。


「難しいわね、なんでくっつけたいのかは説明してくれないんでしょ?」


「それは……はい……」

 

「そうね、じゃあ名前は? 私が知ってたらなんとかできるかもしれないわ」


「えっと久石すずめちゃんと夏川栞ちゃんです」


 私がそう答えると、由愛は難しい顔をして店長の方を向いた。だが店長も首を横に振る。


「……ふーん、知らないけど真面目そうな子たちね」


「まぁ、そうですね」


「うーん……っていうか歳はいくつ?」


 上を見て考えている途中、思いついたようにそう訊いてきた。


「たしか……二人とも15です!」


 生年月日は二人とも12月だから、まだ16歳にはなっていないよね。


「いや、あんたのよ!」


「ああ……私もたしか、15です……」


「そうなの? ならタメでいいわよっ」


 意外にも幼い笑顔を見せられ、今にも叫び出したくなってきたが、ぐっとこらえ「わかった」と小さく返事をする。


 タメなことくらい知っている。ファンブックで生年月日を覚えるくらいには一時期推していたからね。


 由愛は嬉しそうに足をパタパタとし始め、また質問をしてきた。


「そうだ、名前は? 私は秋谷由愛。こっちはお父さんの秋谷源治ね」


 コクリと源氏さんが頷いた。


「私は義井更紗だよ、白百合ヶ丘の一年」


「やっぱりね。私はすぐ近くの北星第一高校の一年よ」


 北星第一高校。偏差値70超えの超名門高校だ。白百合ヶ丘高校も進学校と言われているが、北星第一はレベルが違う。


 何と言っても有名財閥たちが融資しているとかで、校舎の広さや人脈、教育レベル。どこを取ってもトップクラスだ。


「すごい名門だよねそこ」


「まぁ……ね」


 由愛は顔を俯けてしまう。だが私は知っている、この由愛が抱えている秘密を。


「それより、相談の続きをしましょ。くっつけたいのはわかったけど、どういう関係なの?」


「うーん、まだ二人は友達じゃなくって私がとりあえずは友達にしようと動いているんですけど……」


「でも、なかなか上手くいってないってわけね……」


 私は俯きながら「はい……」と呟いた。私の力ではどうともできないから頼るしかないのだ。


「なら、三人で遊びに行くのはどう? やっぱり最初から恋愛って難しいと思うから、友達から始めさせるってことで」


「……天才?」


「ふ、ふふん……まぁこのくらい楽勝よ」


 腕を組んで満更でもなさそうなにやけた顔を見せないように、ぷいっと背けてしまった。


 満更でもなさそうだなぁ、でもこれで恋愛経験がほとんどないっていうのが可愛いポイントなんだけど。


 こんな相談を乗ってくれている由愛だが、恋人がいた試しは一度もないのだ。原作でも恥ずかしそうに語ってたっけ。


 でも三人で遊びに行くって、どうしようか。一応曲とかは前世のが受け継がれているっぽいし、歌える曲もある。


 でも行くとなったらやっぱり――。


「「――アマナイよね(かなぁ)」」


 言った言葉が丸々一緒だった。私たちは再び目を合わせ「あ」と呟いた。






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【あとがき】

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