バッドエンドの危機
そして放課後。
「更紗ちゃんカラオケ行く?」
「いやーごめん、今日予定あって」
「あー、そっかー……じゃあまた今度で」
私が断ると、すずめちゃんが寂しそうにそう言った。
するとほかの女子たちも悲しそうに「まじかー……」と呟いた。
原作で更紗ってこんなポジションだったっけ? たしか主人公の初めての友達だったけど、クラスではそんなに人気じゃないと思うんだけど……。
「じゃあまた明日!」
「「「「またねー」」」」
すずめちゃんとほかの女子たちに手を振り、私はいち早く教室を飛び出た。家に帰って早く行きたい場所があったのだ。
原作通りにいけば今日すずめちゃんと栞ちゃんが出会って、明日には二人腕を組んで学校に来るはず。
それまではこの世界を堪能するとしよう。
私はすぐに私服に着替えてある場所に寄った。『あきた屋』というお餅屋だ。そして店長の50代くらいのおじちゃんに一言告げた。
「いらっしゃ――」
「――いちご大福星付き5個」
私がその言葉を発した瞬間、にこやかな店長の顔が一変し真顔になった。
「嬢ちゃん、どうしてそれを?」
「秘密ですよ」
「……へっ、どこで聞いてきたんだか。待ってろ」
嬉しさが顔から溢れつつ、店長は店の裏へ行きお餅を持ってきた。そのお餅はただのいちご大福のようにお餅の中にいちごと餡子が詰められているだけに見える。
――だけど違う。
実はこのいちご大福。原作ではこの店長の友達にしか教えていない裏メニューだ。それにこのいちごと餡子はこの店代々受け継がれてきている秘密のレシピのもの。
そしてこのいちご大福、原作では栞さんが原作8巻で主人公と喧嘩しているときに初めて食べ、感動のあまり涙を流しながら主人公と仲直りをする。というキーアイテムでもある。
「ありがとうございます」
「えっとお金は…………って、代金まだ言ってねえのになんで知ってんだよ……」
私は財布の中から2000円を出し、会計のところに置いた。
これが原作知識ですよっと。
*
「ふぅ、疲れたー」
家に帰って夜ご飯を済ませ、ようやくベッドにダイブした。スマホを見ると時刻は19時47分になっている。
そろそろ家から飛び出した栞ちゃんが公園に行っている時間帯かな。そこで泣いている栞ちゃんの前に遊び帰りのすずめちゃんが登場するんだよね。
私はふとすずめちゃんのSNSのストーリをふと見た。すると――。
――カラオケに行っているはずのすずめちゃんが、家の猫の動画を上げていた。
…………へ?
私はスマホ片手に固まってしまう。
なんで? 原作ではカラオケに行ってその帰りに泣いている栞ちゃんに会って友達になって……。
様々な憶測が頭をよぎった。そして一つだけ違和感があった。
そうだ、なんで私が断ったらクラスの女子たちがあんなに悲しんでたんだ? もしかして、私が行かなかったらすずめちゃんは行かないと言っていたんじゃないのかな……。
「まずい!」
私はベッドから飛び起き、パジャマから簡単な私服に着替える。
やばいやばい。原作小説11.5巻にあった作者のインタビューに書いてあったことが本当に起きちゃう……!
「ちょっと行ってくる!」
「こんな遅くに? 気をつけなさいよー」
「はーい!」
私はパーカーを羽織り大福を片手に持って、走りながら玄関を飛びだした。そして目的の栞ちゃんがいる公園へと向かう。
急がないと、栞ちゃんが……。
そう、栞ちゃんは今日、すずめちゃんが助けなければ……。
栞ちゃんが自主退学してしまい、物語はここで終わってしまうからだ――。
*
「はぁはぁ……栞ちゃんは……」
公園を見渡した。すると、1つライトの下に照らされているベンチにうずくまりながら座っている女の子を見つける。
いた……!
「栞ちゃん!」
「……義井さん……? なんで……」
私が走りながら栞ちゃんを呼ぶと、栞ちゃんはバッと顔を上げ、泣いている目を丸くさせた。
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【あとがき】
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