百合ハーレム漫画のモブに転生したら、原作知識でなぜかヒロイン全員私ルートなんですけど!?
白雪依
私、モブに転生しました。
私は人生で素晴らしい漫画やゲームをやってきたと思う。
だけど、私がこれまでもこれからも一番だと胸を張って言える作品があった。
それが『あの高校で咲いた百合の花』通称、『あの百合』だ!
主人公とヒロインたちが交わす、大人気青春百合ラブコメディ。漫画、小説、ゲー
ム。全て熟読し、一番お金も掛けた。
そんな世界に私は、最初に主人公の友達として登場するだけの何も成し遂げないまま消えるモブ役、
*
「って……モブでこんなに可愛いってやっぱ『あの百合』はすごいな」
私は鏡の前で自分の顔をぺたぺたと触りながら確認する。
肌はつるつる、目もパッチリしていて、やせ型だが前世より胸もちょっとだけ大きい気もする。
本当にあの百合の世界に来ちゃったんだな。
起きると、私は『あの百合』の世界に転生していた。というか、夢なのでは? と疑っていたが、頬をつねる間もなく、心が受け入れられていた。
というか変に落ち着いている。体は原作のモブキャラだからだろうか。
「なにしてんのあんた」
鏡の前で自分の外見を確認しているところに、茶髪ロングの多分母らしき人が声をかけてきた。
「あーいやなんでもないです……」
「急に敬語って……『さっきもここどこ?』なんて訊いてきたし、熱でもあるんじゃないの?」
「ないから大丈、夫……っす……」
タメ口でも大丈夫かな、と不安になりつつ言葉を交わした。母は首を傾げながら、歯ブラシを水で濡らし始めた。
「ふぅ…………来たーーー!!!!」
私は部屋に戻るや否や『あの百合』に登場する『白百合ヶ丘高校』のセーラー服を手にしながら叫ぶ。
「はー嬉しい! この制服をコスプレじゃなく着られる機会が来るとは!」
私はセーラー服を掴んで、ぎゅっと抱きしめた。
前世の時、この服を買おうとネットで調べたときには1万円近くしたからなぁ……懐かしい。
おそるおそる着替え、部屋にあるスタンドミラーを覗く。すると、映っていたのは完全に白百合ヶ丘の生徒だった。
「原作再現100%じゃん! これ作った人天才だ、って原作の世界なんだろうけど……」
まだ夢の可能性あるし、とりあえず学校に行かないと……でも行ったら、主人公ちゃんとヒロインたちと会うことになるんだよね。そんなの、心臓が持つかどうか。
*
す、すごい。
私は白百合ヶ丘高校の校舎を前に立ち止まり、ゆっくりと見渡す。綺麗で大きい校舎に、たくさんの生徒。綺麗な花が咲いている中庭、グラウンド。
すべて私が前世、家で何度も夢見た校舎だ。
「ってあれ? 更紗ちゃんじゃん」
「へ? あ……」
突然声を掛けられ振り返った。視界の先にいたのは紛れもなくこの学校のマドンナ的存在であり、この『あの百合』の世界で言う主人公――。
――そう、
「……? どしたの?」
ぼーっと主人公の可愛らしい顔を見ていると、手を目の前にかざして飛んでいた意識を戻してくれた。
「え、あ……可愛い……」
「……え? 急にどうしちゃったの……?」
待って私なんて言った!?
「あ、ミスで……えっとなんの話だっけ!?」
視線をあちこちにバラまきながら、私はすずめちゃんに訊いた。
テンパるな私……って無理がある。だって目の前に本物のすずめちゃんがいるんだもん!
可愛らしい顔立ちに綺麗に染められた青くて長い髪。それにチャームポイントのようについている星形のヘアピン。
そして原作では感じられなかったほどのいい匂い……。
全部一緒だ、このヘアピンはたしか昔お父さんに買ってもらったやつで、今でも大事につけてるんだよね。可愛い。
「いや更紗ちゃんがずっと校門の前で経ってるからなにしてるのか気になったんだけど」
「ああごめん、ちょっと興奮してただけ……」
「校門に!?」
「違うよ!?」
否定の言葉ですずめちゃんの顔が、驚きの表情から安堵の表情へと変わった。
危ない、主人公ちゃんにこんなところで変人判定に変えられたらたまったもんじゃない。
「ならいいけど、早く教室行こ?」
「あ、うん」
私はドクンドクンという大きな心臓の鼓動をなんとか抑えて、すずめちゃんと二人並んで歩いた。
「おっはよー」
すずめちゃんが女子グループのみんなに挨拶をすると、クラス中の女子から挨拶が返された。ただ、一人を除いて。
教室の端っこで小説を読んでいる子は、その挨拶に見向きもせずにただ本と向き合っている。
まぁ、真剣そうな顔で読んでいる本がただのラノベだというのは私だけが知っている話だけど……。それにしても、眼鏡かけてあのビジュなのにまだモテてないって、やっぱりこの世界おかしい。
そう、あの度が入ってそうで入っていない伊達メガネをし、綺麗で長い黒髪ロングの清楚系美少女。あれこそが最初のメインヒロインである
そして、今日で運命が決まる一番重要な役でもある。
可愛いなぁ……あれでぼっちっておかしいよ、私が救いたいけど……。
ちらっとすずめちゃんの方に目を向けた。そして笑っている顔を見て一安心する。
大丈夫そうだな。原作ではこの二人が今日結びついて、そっから物語が進んでいくはず。私は安心してこの世界のことを調べつつ、主人公とヒロインの絡みを待つことにしよっと。
そして私は知っている。9月2日、今日この日がこのラブコメ漫画の運命を変える日だということを。
私はこの世界のことを、誰よりも知っているのだろう。
そして同時に、誰よりも“何もできない存在”だということも。義井更紗は、物語の序盤で主人公と知り合い、何も成し遂げないまま消えるモブ。
私はその未来を知っている。だからこそ、それでいい。
私はただ、主人公とヒロインたちの絡みを見たいだけなのだから!!!
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【あとがき】
新連載となります。
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