第2話


 う、あァ……。

 うッ、ケホッ、カハッ。


 くっそ、最悪の目覚めだな。まだ喉がいてー。

 ってなんだこの違和感。身体の中になんかモヤモヤしたのが渦巻いているっていうか……なんだこれ!

 ただこれ、不思議と不快感はない。まあ、良い気分もしないが。


 よくよく考えてみれば、あの水晶は何だったんだろうな。俺が倒れてから急に現れたような気もしたが。

 ……まあ、それはない、か?


 ……ん? なんだ、あれ? さっきの水晶の色に近いモヤモヤがあるぞ? ってか、なんか視界がクリアになってねーか? 

 うーん。まあ、することもないし、取り敢えずモヤモヤに近づいてみるか。


 * * *


 紫のモヤモヤに近づく過程で何となく感じたが、足取りが軽い気がする。あーいや、軽いと言えば語弊があるな。正しく言えば、違和感がなくなった、と言うべきか。さっきまでは歩きづらく感じたが、今はそれがなくなってる。

 なーんか、俺がトカゲになってるっていう実感があるからやだなぁ。


 それから、喉の渇きと空腹が和らいでいる。あの水晶のお陰かどうかは分からないが、再度水晶を見かけても絶対に食べない。これは誓える。


 そんなこんなで、俺は紫のモヤモヤにたどり着いた。……のだが、、、


 お、おいおい。これは……。

 食わねーと誓った瞬間に相見あいまみえるとは……。


 そこに転がっていたのは、俺が先ほど食べ、のたうち回った紫色の水晶であった。それも、大きさは俺が食べたものとは比較にならない程大きい。

 しかし、あの時のようないい匂いはしない。


 うーん、どうしようかこれ。

 いやまあ、無視して離れりゃいいんだけど、なーんかこの水晶の近くにいると落ち着くんだよな。俺の命を奪いかけたにっくき水晶だけどよ。

 うーーむ。まあ、いいか。しばらくここを拠点にしよう。森で迷っても紫のモヤモヤがあるから戻ってこれるし。

 今はとにかく水と食料だ。

 また、探すしかないよなぁ。


 * * *


 ありました。

 いやあったよ。

 ふつーに見つけましたよ湖。

 歩いてから五分経ってないぞおい。

 えー、さっきの俺の苦労はなんだったの? 俺倒れたんだよ? 怪しい水晶飲み込んでのたうち回ったんだぞ? はぁー……まあ、いいや。今は目の前に水があることを喜ぼう。


 さてさて……ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァ。

 スゥゥ、ハァ……。さいッこう。

 あれだ。空腹は最高の調味料ってやつだ。いや空腹じゃなくて口渇こうかつだが。

 ただの湖の水がこんなに美味しいとはなぁ。


 さてさて。水が見つかったなら次は食料だ。こんな森なら果実の一つや二つはありそうだが、ないんだよなぁこれが。いやさ、二日も探したんだからないでしょもう。……ああ、いや、水は見つかったのか。んー。まあ、もっかい探しに出てみるか。


 * * *


 ありました。

 あったよクソが。

 なんなんホントに。あの俺の苦労は? あの汗と涙と血はなんだったんだ一体。

 はぁ……マジで場所変わったんじゃねとか思う程にあっさり見つかったよ。まあ、この愚痴は今度虚空に向かって吐き出そう。今はあの、木に成っている果物を取ることが先決だな。因みに、木に生っているのはリンゴだ。旨そう。


 さてさて、ではどうやってあのリンゴを採るか。俺、昔から木登り苦手なんだよなぁ。

 ……あれ? トカゲって、木登り上手くね? 勝手なイメージだけど。

 まあ、物は試しだ。一回やってみるか。


 * * *


 いやー、上手くいったねぇ。

 凄かったよあのスピードは。地面を歩くスピードで木に登るんだもん。はぁ……。

 まあさ、これで食料ゲットだし、別にいいんだけどさぁ。なんか、トカゲの身体ありがとうって思ってる自分が嫌になるよねぇ。こんな身体、嫌なのに。

 はぁ……。憂鬱。


 * * *


 ただいま水晶よ。


 さて。水も飲んだし、食料も確保した(水晶付近に五、六個ほど転がしてきた)。次は何をしようかねぇ。うーむ、最低でも寝床には屋根を付けたいよな。でも、この身体でどうやって……? ぶっちゃけ、現実的じゃないよな。

 あと、この紫のモヤモヤの正体も知りたいし……人にも会いたいよなぁ。まあ、この身体じゃ追っ払われるのがオチだろうが、一度は会ってみたい。

 それに、コイツ紫の水晶の正体も知りたい。


 やりたいことはそれなりに多いなぁ。何から手を付けていくいくべきか……。



 パキッ



 ッ!

 なんだッ? 今、明らかに枝を踏んだような音がしたぞ?


 辺りを見渡す。すると、湖の方向にある木の裏に、何かがいることが確認出来た。


 何か、いる。

 トカゲになってから初めてのエンカウントだ。

 これが吉とでるか、凶とでるか、だな。


 俺が構えて待っていると、子供ほどの背丈を持った生き物が姿を表した。その生き物は、不健康そうな緑がかった肌を持ち、薄汚い衣を身に纏っているーーゴブリンであった。


 うっそぉ……。あれ、ゴブリンだよな? 地球上にゴブリンって存在しているのか? いやしてるわけねー。薄々思っていたが、ここってやっぱ異世界なのか……?


 まあ、考え事は後だ。今はあのゴブリン……って、こっちに来てんじゃねーか!? 


 やベー、やベーッ! どうしよこれェ!?

 逃げるか? でもここには水晶、それに頑張って運んだリンゴさんが……!

 クッソ。背に腹はかえられねェ、逃げるしかないッ! さらば、ゴブリンよ! もう二度と会いたくない!


 * * *


「ギャキャ! ギャキャァ!」


 あ、あァ……行ってしまった……。

 くそぅ……こんな見た目だし、逃げるのは仕方ないのかも知れないけどさぁ。けど向こうもトカゲじゃん。逃げんなよ。しかもあんなにいいステータス持ちやがって。

_ _ _ _ _ _

名無し

Lv:4/10

種族:マジックタイニーリザード

ランク:D

状態:普通

【能力値】

体力:15/24

魔力:50/50〔×10〕

物攻撃:14

物防御:13

魔攻撃:39

魔防御:15

素早さ:24

知能:55

【種族スキル】

[魔法威力増強<大>Lv.-][使用魔力抑制<大>Lv.-]

[魔力増加Lv.1][身体機能効率化Lv.-]

[魔の戦士Lv.-]


【固有スキル】

[魔力の魔眼Lv.-]


【先天性スキル】

[システムLv.1][可能性Lv.-]

[自己鑑定Lv.-][念話Lv.1]


【後天性スキル】

[毒耐性Lv.2][口渇耐性Lv.1]

[空腹耐性Lv.1]


【称号スキル】

[異世界転移者Lv.-][共喰いLv.-]

[魔石の毒を乗り越えし者Lv.-]

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

_ _ _ _ _ _

名無し

Lv:1/5

種族:レッサーゴブリン

ランク:F

状態:普通

【能力値】

体力:8/8

魔力:3/3

物攻撃:11

物防御:7

魔攻撃:2

魔防御:3

素早さ:5

知能:49

【種族スキル】

[繁殖Lv.-][棍棒術Lv.1]


【先天性スキル】

[システムLv.1][可能性Lv.-]

[自己鑑定Lv.-][鑑定Lv.2]


【称号スキル】

[異世界転生者Lv.-]

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 泣くぞ? なんなのこの差は? 向こうタイニーでこちとらレッサーだぜ?

 ランクもFとD。一つとはいえ違いが……。

 能力値も差が……特に魔力と魔攻撃が。

 それに種族スキルもだよ。あっちめちゃくちゃかっこいいのにこちとら繁殖だぞ? こちとら天下の童貞様じゃい。

 さらに固有スキルに後天性スキル。……もはや俺に無いものが。


 はぁ……どうしよ。あのトカゲ追いかけるか? ……ってこれ、リンゴか? それにこれ……。

_ _ _ _ _ _

マジックカオスドラゴンの魔石

状態:良好

【スキル】

[魔石Lv.-]

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 マジックカオスドラゴンと来ましたか。アイツの種族はリザード……それでこれはドラゴン。何かしら関係がありそうだな。そこに食料リンゴってことは、ここを拠点にしていたのか? ってことは、ここに戻ってくる可能性が高いよな。

 んじゃ、少し待っていようか。


 ……でもこれ、あのトカゲが力を付けて戻ってきたらどうしよう。鑑定のスキルを持ってなかったし、俺のこと知らないよな? ま、まあ、何とかなるだろう。それか、話をしようとでも地面に書いておくか? ……うん、そうしよう。これで殺されたら元も子もない。

 

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