第3話


 ハァ、ハァ……ゴブリンは?

 ……よし、付いて来てないな。ふぅ、助かったぜ。


 にしても、そうか、異世界か……。いや、そうと決まった訳じゃないか。それに、前世? に未練があるかと聞かれれば、覚えていない訳だし、そこまで障害がある訳じゃない。

 まあ、強いていえば人間に戻りたい。


 それにしても、拠点、取られちゃったかなぁー。まあ、ひょっとしたらあの場から離れるかもしれないが……何日かしたら一応戻ってみるか。

 それから、果実の成る木を見つけておきたいな、食料として。それに水も。


 はぁ……日が暮れるのはかなり先だろうし、ちょっくら動き回るとするかな。


 * * *


 日が暮れてきた。

 取り敢えず、水源と果実の成る木を見つけ、今は木陰で休憩中だ。あまり疲れてはいないが頭を整理する為だ。


 うーん、次は何をしようかなぁ。

 ここが異世界だと仮定して、ステータスとかないのかな? まあ、定番としては、魔物を倒すとレベルが上がったり、魔法を使うとスキルが手に入ったりだよな。

 うーむ……。

 ファイアー! アクアボール! フラッシュ!

 ……なんも起こんねぇ。

 やっぱ口に出さなきゃか?


「……キュキュ。キューキューファイアー! キュキュキューアクアボール!」


 ……ダメかぁ。多分、端から聞いたら何やってんだってなるんだろうなこれ。

 うーん、あと定番としてはステータスボードだよな。


キュキューキュステータス!」


 ……何も起きない。

 まあ、そんなに甘くないか。想定内だ。


 そういえば俺ってば、さっきからまったく疲れてなくないか?

 旧拠点でリンゴを運んだ時に、さっき逃げるために走った時。双方結構疲れる事なのに。何故だ? トカゲだからか? トカゲスゲー。いや、んな訳ねーよ多分。

 

 んー、実際問題、出来ることがないんだよなぁ。魔物を倒すとはいえ、か弱な俺でも倒せる相手となると何がいるんだろう? 芋虫とか? いやー、触りたくねーなー。


 なんてことを考えていた、その時だった。


 ヒュッ、と風を切る音が聞こえたと思えば、ドスッ、と、俺の真横で何かが突き刺さった音が聞こえた。


 なん、だ?


 俺は恐る恐る、飛来した物に視線を向ける。


 地面に深々と突き刺さったのは、矢であった。


 何故? 何があった? 死んでいた。一歩ずれていれば射ぬかれていた。その事実が俺の頭を真っ白にさせる。

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 条件を満たしました。

 後天性スキル[一瞬の刹那Lv.1]を獲得しました。

 称号スキル[危機的状況Lv.-]を獲得しました。

 称号スキル[親の寵愛ちょうあいLv.-]を獲得しました。

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 なんだ、これ?


 ッ! 考えてる場合じゃねえ! 逃げる!

 俺を襲ったのが誰だかわからないが、誰にしろ今の俺じゃ敵わねぇ!


 そうして俺が数歩前にでた時、数秒前まで俺のいた場に、剣が深々と刺さった。


「……避けた? いや、逃げで偶然、か?」


 言語が分かる?

 いや、今はどうでもいい。逃げだ。

 だが一直線で逃げてはダメだ。曲がり、直線、逆に曲がり、直線、同じ方向に曲がり、直線、曲がると見せ掛け直線!

 さっきのが矢だったことから、おそらく持っているのは弓かクロスボウ。クロスボウならば装填に時間が掛かると聞いたことがある。弓でもこの木々の間を抜けながらならば早々当たらないだろう。

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 条件を満たしました。

 後天性スキル[思考加速Lv.1]を獲得しました。

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 おおう? また出たなこのウィンドウ。

 まあ、いいさ。今は気にせず逃げ一択……!?


 なッ!? 嘘だろ待ち伏せかよ!?


 俺の進行方向にいたのは、自身の背丈ほどある杖を持ち、ローブに身を包んだ青髪の少女だった。


 見た目的に魔法使いか? 不味いだろこのままじゃ!


「……かい三象さんしょう風属性魔法【ウインドウォール】」

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 種族スキル[魔の戦士Lv.-]が発動しました。

 [風属性魔法Lv.1]を獲得しました。

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 クッソ、逃げ道を塞がれた!

 ……? 待て、なんだこれ? 風属性魔法だと? それに、不思議と詠唱と効果が分かるぞ? 


「階・一象火属性魔法【プチファイアー】」

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 種族スキル[魔の戦士Lv.-]が発動しました。

 [火属性魔法Lv.1]を獲得しました。

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 俺の頭上付近から声が聞こえたと思えば、再びウィンドウが出て、不思議と詠唱と効果が分かる。

 俺の頭上にいた男は弓に、先端の燃える矢を持っていた。恐らく始めに矢を撃ったのはアイツだろう。

 やがて、俺に先ほど剣を突き付けた男が俺の背後を取る。

 前、上、後ろ。完全に囲まれた。


「まったく。リザード一匹にここまで遅れを取るとはな。正直、予想外だ」

「始めの矢さえ当たっていれば直ぐだった。トオル、腕落ちた? ブランク? それはそうと、その矢撃たないで。ウインドウォールで火が拡散される」

「いや! 軌道は完璧だった筈だよ! どちらかといえば、当たる寸前に軌道が変わったとしか!」

「はいはい。わかったわかった。今度ブランク取り戻そうな。練習にゃ、付き合ってやっから」

「うぅ、本当なのにぃ……」


 弓を持つ男は不服そうに矢についた火を消しながら普通の矢に持ち変える。


 クッソ、呑気に話し込みやがって。

 だが、良いことを聞いたぞ? 火が拡散されるとな? 自爆に近いかもしれないが……まあ、燃え広がる前に逃げれば多分平気だろ。

 ……さて、異世界初の、魔法を使う!


キュキュキュー階・一象火属性魔法、[キュキュキュープチファイアー]!」


 俺が魔法を使うと、放ったファイアーがウインドウォールに吸い込まれ、瞬く間に火が辺りに拡散される。


「……あん? …!? ハァ!? コイツ、魔法を使った!?」

「まさか、マジック個体……! ってヤバい! ウインドウォールで火が!」


 よしッ! これで後は逃げれば!

 グァ!? 痛ってェ! なんだ!? ってあの弓野郎か! アホだろアイツ火ィ消せよ!


「バカやろう! 今は火を消せ!」

「でも! あのリザード逃げちゃいますよぉ!?」

「今はそれどころじゃねぇ! 火ィ消せ! 山火事の責任は俺たちに降り掛かるぞ!」


 ……ほっ、あの剣の男がマトモで助かったぜ。

 だが、不味いな。足をやられた。移動速度がバカ遅くなる。……ってなんだか、体調が優れないな。何でだ? かなり、ダルい。

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 条件を満たしました。

 後天性スキル[毒耐性Lv.2]が[Lv.3]へと上がりました。

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 毒、耐性? マジかよ、あの弓野郎。矢に毒を塗ってやがったのか。くっそ。それを、自覚すると、よけいに、だるく……。


 そこで、俺の意識は深く沈んでしまった。


 * * *


 ウインドウォールで火が拡散され、山火事になりかけたのをどうにか消火した冒険者三人組は、弓使いトオルの証言を元に逃げたリザードの行方を探していた。


「クッソ。まさか、マジック個体だとわな。はぁ、さっさと戻ってエールをがぶ飲みしてーなー」

「まぁ、マジック個体の魔石は売ると高い。毒で弱ってるなら、止めを刺すべき」

「それに、マジック個体は成長すると大変ですからね。僕たちの中にテイム持ちがいれば別ですが」


 三人は歩いていくと、森の中に人影があることに気がつく。

 三人はそれぞれの得物を構え、静かに歩く。


「ッ! ……って、なんだお前かディオナ」

「あぁ? なんでお前たちがここに……」


 森を歩いていた三人の冒険者たちが遭遇したのは、同じ冒険者に属している先輩の女性、ディオナであった。


 基本、冒険者という職種は上下関係を気にしない。先輩後輩、ランクの上下、年の差など、そういったものを気にしていると冒険者業に支障があるからだといわれている。だが実際は、単に敬語を知らない、ということが多いそうだ。


「俺たちは、採取依頼の帰りに見つけたリザードを仕留める為にな。お前は?」

「単に狩り、だな。さっき、あっちでレッドダイルを仕留めたんでな。その帰りだ」

「ふーん。まあ、帰りってんならいいんだ。ここらでリザードを見かけても狩らないでくれよ? 俺たちの獲物だ」

「まあ、なるべく心がけるよ」

「頼んだぜ。うっし、ここら探すぞー」

「「おー(!)」」


 一人は抑揚なく、もう一人は元気よく返事をし、辺りに散会し始めた。

 ディオナはその三人には興味がなさそうにその場を去っていった。

 

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トカゲ転生~愉快な仲間と生物の頂点へ~ RU-HA @RU-HA0602

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