第7話-エピローグ-

『——より、火依』

 誰かがあたしの名を呼んでいる。

 あたしは確か邪悪な光に飲まれて死んだのではなかったか。

 身体に異常がないか動かしてみる。

 どこにも痛みなどは感じない。

 自由に動く。

「火依」

 この声はルナだろうか、あたしは目を開けた。

 そこにはルナではなく、一人の青年とうさぎが心配そうに横になっていたあたしの顔を覗いていた。

「だ、誰!? アルテミス、この人誰よ!」

 アルテミスはやれやれといった仕草で言った。

「声で判るでしょう、ルナさんですよ」

 あたしは何故ルナが人間になっているのか不思議に思ったが、きっと神様の力だろうと直感した。

「火依が成人になったら、私と結婚して欲しい。それから子供を産んで人間を増やしていこう」

 ルナが何を言ってるのか意味が判らない。

「はあああああああ!? いきなり何恥ずかしいこと言ってるの!」

 ルナはあたしの言葉に動じず続ける。

「嫌か?」

「——嫌ではないけど、時間を下さい!」

 何故か敬語になってしまった。

 顔は整ってて美形だし、あたし好みではあるけど、すぐ返事を返したら軽いと思われるのが嫌だった。

 しかし、よく考えたら元鳥じゃん。

 あたしが鳥に求愛を受ける日が来るなんて、なんだかすごく変な感じだし、形は人間でも中身は鳥。

 鳥と結婚するなんてどこかの童話みたいだった。

 アルテミスはあたしの顔が真っ赤になっているのに気づいたらしく、薄ら笑いを浮かべていた。

 怒ったあたしはアルテミスに蹴りをかまそうとしたが、見事に空振りだった。

 

 『わたしは、心底人間が嫌いでしたけど、火依さんだけは一緒に過ごしていくうちに、いつの間にか嫌悪感は無くなっていました。同時にルナさんが言っていたそのうちわかるという言葉の意味も、ようやく判った瞬間でもありました。でもわたしは思いました。火依さんだけは特別な人間なのだと。側にいると、暖かくて、優しくて、安心できる存在でした。火依さんが成人になった途端に、毎日のように火依さんを口説くルナさん。その言葉にいつまでも慌てて照れる火依さん。それをからかうわたし。それにキレてわたしに攻撃してくる火依さん。当然わたしは脱兎の如く逃げます。そんな日々が暫く続きましたが、ようやく観念したのか、火依さんはルナさんのプロポーズを受け入れました』

 

(やがて月日は流れ、人間は徐々に増えていきました。火依さんの一族が人々の先頭に立って、争いのない世界を構築していきました。動物と人間の共存は、初めはぎこちなく、上手くいきませんでしたが、ここ数百年でそれは無くなりました。わたしは不死の動物の長となり、人間の監視を続けています。ルナさんと火依さんの一族達は、真っ直ぐに正しく精一杯生きています。頼りなかったわたしも、今では動物の頂点にいます。人間は過ちを犯す生き物です。誰かが導かなければ、瞬く間に簡単に悪に染まります。もう二度と悲劇は繰り返してはいけません。神様、わたしは役目を果たせているでしょうか。わたしは頑張れてるでしょうか。もうわたしは休んでも大丈夫でしょうか)

 その問いかけに誰も返事をするものはいないと思われたが、天からの声で『後は我々が引き継ごう。お主は、しばし精神を休めると良い』

 わたしの意識はそこで途絶えた。

 次に目が覚めると、そこには笑顔のルナさんと火依さんが目の前にいました。

 わたしは二人に手を引かれ、懐かしさと、温かさと、幸福感で溢れました。

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神人大戦 月夏優雨 @gekkayuu

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