文章の端々から漂うのは、五感に訴えかける和の情緒です。
古びた柱の黒ずみ、廊下が軋む音、そして叔父が燻らせる煙管の甘苦い香り。
物語の芯にあるのは、指定暴力団「黒鉄組」の組長の次男として生まれ育った主人公・安曇と、叔父の隆明の間に流れる静かな情愛です。
「呪い」に蝕まれ、死の淵にありながらも飄々として弱みを見せない叔父と、叔父のことが大好きな安曇。
その絆の強さが、薄暗い物語の中で鮮烈な印象を残します。
お役目のため、異形との対峙。「命を吸う水」である死水や、そこから湧き出る黒い影。
そしてそんな中で出会う、謎の凄腕の少女・継葉。
静謐で美しい筆致から生み出される和風ファンタジーは必見です。
日常の静けさの中に、確かに死の気配が漂う、非常に引き込まれる作品でした。
極道の屋敷という異質な舞台でありながら、組員たちのやり取りや朝の風景がどこか温かく描かれており、その穏やかさが「黒鉄の呪い」の不穏さを際立たせています。
主人公・安曇の冷静な視点と、叔父を想う気持ちの揺れが丁寧に描かれていて、感情移入しやすい構成でした。
とりわけ叔父・隆明の存在感は圧倒的で、軽やかな態度の裏に確実な死の影を感じさせます。
終盤の「呪いはあるぞ」という一言が、それまで積み上げてきた空気を一変させ、続きへの期待を強く煽りました。
和風伝奇としても、人物ドラマとしても非常に完成度が高く、今後の展開が楽しみな作品です。