第5話-憎悪の章二-

 研究所を隅々まで探したが棺は全滅だった。

 電源がまだ生きていた機械で生存者レーダーの信号を送ったが、どこにも反応が返ってこなかった。

 世界各地のコールドスリープ所はどうやら全滅らしい。

「——そんな。みんな死んでいるのか……」

 少年は開けられた棺を見て絶望する。


 研究所の記事によると神の怒りに人間は触れた。

 その天罰によって人間は滅ぶしかなかった。

 とりあえずはコールドスリープで時間を稼ぎ、対応策を練るという流れだったらしいが状況はご覧の通り失敗。


「しかし、これは誰かが開けたということだ。という事は、オレの他に生存者がいるということになるな」

 少年は空っぽの棺を探しているが中々見つからない。

「ここではない別の場所で目覚めてる可能性もあるな。オレの家族は無事だろうか」

 生存者は何人いるのだろうか。多ければいいと言うものではないが、少なければまず勝ち目がない。どうするかを考えてるうちに、両親の棺を見つけた。しかし、生存はしていなかった。後は妹だけだが、あいつだけは生きていてほしい。

 だが、オレには神に争う術が何もない。

 オレは考えた。

 死ぬほど考えた。

 そしてある一つの可能性を見つけた。

 それは悪魔との契約だった。

 歴史の裏に必ず出てくる悪魔。

 戦争や虐殺。

 歴史上のそういう行いをしてきた人物は、必ず契約していると言われている。

 だが、そんなことをしている人物は数は少ない。

 そして事件後は、行方不明になっているという共通点がある。

 授業をたまには、真面目に聞いておくものだなと思った。

 判ったところで、悪魔はどこにいるかがわからないから、結局振り出しに戻るな。

 一体、悪魔はどこにいるんだ! 

 この憎しみの炎は決して燃え尽きない。

 すると、突然頭の中に声が入ってくる。

「我と契約するか。復讐という憎しみの炎を燃やす人間よ。その強い憎しみは本物だ。我は人間の強い憎しみに誘われてお前の前に来た」

 オレはあたり見回したが何もいない。

 何も見えない。

「無駄だ、人間の目では我の姿は視えない。人間よ、我が力を求めるなら、左眼と命を捧げよ」

「お前が悪魔なのか? その力があれば神に勝てるのか? それにお前の何の得になる!」

「お前たちがいう悪魔と相違ない。我の望みは魂と左眼だ。無理矢理、お前から奪うこともできるが、それでは何も面白くない。我はただ憎しみにかられた人間の行く末を見るのが楽しみなのだ。騙したりはしない。そんなことをしても、つまらないからだ。もういいだろう? さあ、我と契約せよ」

 どうせ、何も手がなかったんだ。

 復讐ができるなら、命くらいくれてやろう。

「判った。契約しよう。さあやってくれ!」

「目を閉じるといい。我がいいと言うまでそのままでいろ。——目を開けよ。契約は成功だ。適合するかはお前次第だ。慣れるまで苦しいぞ」

 目を開けた瞬間凍りつくような激痛に襲われる。

 オレは口から吐血した。

 身体が燃えるように暑い。

 人はこんなに高温になるのかという気が遠くなる感覚。

 今にも身体から炎が出るのではないかと恐怖した。

 オレはその場で倒れ意識を失う瞬間、妹を見た気がした。

「ひ——。生きていたの——か——」

 言い終える前にオレは意識と大切な記憶を失った。

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