第2話-出会い-
二羽の間に会話はなくただアルテミスはルナの後についていきました。
周りには昔ヒトが住んでいた痕跡がいくつかありました。
ヒトはこんな山奥でも生活していたのかと、アルテミスは恐怖を抱きました。
近くには何かの施設があったであろう跡地が残っていました。
そこでルナは立ち止まり振り返る。
「アルテミス。ちょっと中を見てみないかい?」
「ルナさんがそう言うなら…」
アルテミスはあまり乗り気では無かった。
何かいいようのない不安に襲われたからです。
ルナはいくつか棺のような箱に触れていた。
すると、中が開き腐敗した嫌な悪臭が漂いました。
「ヒトだ……。どうやらこれは冷却装置だったらしい。それが何が原因かは解らないが失敗したんだ」
アルテミスは思わず目を背けた。
この棺の中に全部ヒトが入っているんだろうか。
そう考えるとおぞましい。
万が一成功した棺があったらと考えると、アルテミスは全身が震えました。
「それにしても、果てしない数だ。ヒトは繁殖が出来なくなったから、少しでも未来へ行きたかったんだろうか」
ルナは考える仕草をしながら、棺にあるボタンを押し中を確認していく。
「ルナさん、もうやめましょうよ」
「君は何がそんなに恐いんだね」
「恐いですよ、生きてるヒトがいたらと思うとそれも悪いヒトだったらどうするんですか!」
「それは考えたが、どうにも好奇心が勝ってしまってね」
苦笑しながらルナはボタンを押すのを止めない。
「好奇心は猫を殺すですよ。もうやめましょうよ!」
アルテミスの声が涙声に変わったので、ルナはこれで最後にしようと思いボタンを押した。
中を覗くと腐敗していない。
まるで眠っているかのように中にヒトがいた。
アルテミスは中を覗くと、うさぎだけに脱兎の如く逃げ出した。
ルナはこの棺が二層になっていたことに気づき、近くにあったボタンを押してみると、突如建物内に強い風が吹いた。
それは冷たい風だった。
再びヒトの様子を伺うと目覚める気配はない。
ここも失敗していたのだろうかと思ったが、胸に耳を当ててみると、微かに鼓動を感じられた。
このヒトは″生きている″
一体どっちのヒトなんだろう。
今なら目覚める前に、息の根を止めることが出来る。
悩んだ末にルナは嘴を胸から遠ざける。
このヒトは美しい顔立ちをしていた。
髪は真っ黒で長く、年の功は十四ぐらいだろうか。
服装はフリルのついた黒いワンピースだけだった。
死神か天使かどちらだろう。
神から授かったあの力を使うべきか否か。
だが、力を使う以前に好奇心が勝った。
ルナは何度か嘴でヒトの頬を軽くつついてみる。
すると切れ長の睫毛が静かにゆっくり動き目が開いた。
ヒトが目覚めた!
ルナは逃げれるように距離をとる。
「ここは何処……? 確かあたしは両親に薬で眠らされて——」
ヒトは頭を抱えながら何かを逡巡しているようだ。
アーモンド形の綺麗な黒い瞳だ。
ルナはこれからどうするか思考を巡らせる。
悪いヒトだった場合、アルテミスと一緒なら勝機はあるだろう。
少女は長い間眠っていたせいで全体的にほっそりとしているからだ。
もちろん栄養補給はされてるだろうが、恐らくコスト削減のために最低限だろうと予想がつくからだ。
不意をつけば難なく
アルテミスは未だに建物の外から様子を伺っているようだ。
「君の名前は?」
少女は鳥が喋ったことに心底驚いてるようだ。
身体がぴくっと動いた。
「な、なに!? 何で鳥が喋ってるの?」
「驚くのは無理もないか。君たちヒトが消えると同時に、私たちは神から色々授かったのだ。私はルナだ、あそこで隠れているうさぎがアルテミスだ」
少女はしばらく黙り込んだ後、信じられない事実をゆっくり消化しているようだ。
「信じられないけど、信じるしかないのよね……。まさか動物が喋るなんて今でも信じられないわ。頬をつねっても痛いし、これが現実なのよね。人間もあたしだけなんて信じられないわ。あたしはどれくらい眠っていたのかしら。あたしは……、あたしは
火依と名乗った少女を一瞥する。
やはり整った美しい顔立ちだ。
特に悪意や嫌な気配は感じない。
火依は周囲を見渡し、不思議そうに私をじっと見つめる。
「少なくても数百年は眠っていただろう。君以外にも生きたヒトがいないか調べようとしていたんだ。残念ながら君は稀なようだけど。残りも探すのを手伝ってくれないか?」
火依はゆっくり頷いた。
「アルテミス。君はいつまでそこで隠れているんだい?」
「嫌ですよ。恐いじゃないですか! ルナさん、焼き鳥にされますよ!」
「随分な言い草ね。あたしはそんなことしないわ!」
ルナは目に力を入れると、目が赤に変わった。
この瞳の力はヒトが善いものであれば白い光が見える。
逆に悪に染まれば黒い光が見える。
この能力はルナにしか与えられていない。
何故最初からこの力を使わなかったのか。
それは体力をかなり消耗するからだ。
下手をすれば動けなくなるから、なるべく使いたくなかった。
悪いヒトであった場合逃げられないからだ。
でもこのヒトが善いものだと、一応予感はしていたが案の定白い光りだった。
「——その少女は善だ、アルテミス。だから安心していい」
「なんで言い切れるんですか!」
隠れているアルテミスの側へ行き説明した。
何とか信じてもらえたようだ。
「ルナさん。だ、大丈夫ですか!」
アルテミスはルナを背中に乗せた。
「なに? ルナはどうしてぐったりしてるの?」
アルテミスは仕方なく事情を説明する。
「信じられない。そんな不思議な力があるなんて! でも具合悪そうだし事実なのよね……」
「ああ……。少し休めば大丈夫だ。そんなことより、火依はこれからどうするんだね?」
「呼び捨て? まあいいけど。いく宛もないし、あなたたちについていってはだめかしら」
「私は構わないが。アルテミスどうする?」
アルテミスは俊巡しながら答える。
「本当は嫌ですけど、ルナさんの力を信じます。わたしにはあまり近寄らないでくださいよ!」
アルテミスは心底嫌そうに言う。
「随分な嫌われようね。でも人間は動物たちに酷いことをしていたから仕方ないわね……」
火依は少し悲しそうにいった。
「わ、解ればいいです」
二羽と一人は陽がくれたので一旦森へ戻ることにした。
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