第25話 神が「ーーーー」を宣告する

――最強は、決まらなかった


空が、

割れた。


雷でも、

爆音でもない。


理解だけが、

上から降ってきた。


神は、

姿を現さない。


声だけが、

島全体に届く。

「――実験を、終了する」


誰も、

歓声を上げない。


誰も、

膝をつかない。


「勝者は?」

誰かが、

問いかける。


神は、

即答しない。


沈黙。


その沈黙の中で、

全員が気づいている。


もう、

 戦っていない。


神は、

ようやく告げる。


「勝者は、

 存在しない」


ざわめき。

怒り。

困惑。

拍子抜け。


「ふざけるな」

「ここまで

 殺してきたんだぞ」


神は、

淡々と続ける。


「最強のMBTIを

 決める実験だった」

「だが」

「“最強”の定義が、

 途中で

 失われた」


空に、

映像が浮かぶ。


秩序を築いた〈王〉。


檻を暴いた〈設計者〉。


拒否を言語にした〈共感者〉。


殴られ、

象徴を降りた〈調停者〉。


「どれも、

 勝者になり得た」

「だが」


神の声が、

わずかに歪む。

「人間は、

 勝者を

 必要としなくなった」


その言葉が、

一番重かった。


「よって」

神は、

宣告する。


「勝者不在」


誰かが、

笑う。


乾いた笑い。

「じゃあ、

 俺たちは

 何だったんだ」


神は、

答える。

「被験体だ」


容赦はない。


「だが」

少し、

間を置く。


「予想外に、

 成功した」


空に、

新しい文字が浮かぶ。


実験結果


・支配は最適化される

・反逆は洗練される

・共感は拒否へ進化する

・そして

 秩序は

 王を必要としなくなる


〈王〉は、

静かに聞いている。


〈共感者〉は、

拳を握る。


〈設計者〉は、

苦笑する。

「……勝ち逃げかよ」


神は、

最後に言う。


「この島において」

「最強のMBTIは――」


一拍。


「存在しなかった」


空が、

元に戻る。


神は、

去った。


誰も、

追わない。


沈黙。


そして、

誰かが言う。

「……で、

 明日の水は?」


その一言で、

世界は続く。


〈観測者〉の最終記録。

勝者:なし

支配者:消滅

生存者:未確定


だが

社会:発生


〈王〉は、

剣を置く。


〈設計者〉は、

地図を燃やす。


〈共感者〉は、

焚き火を足す。


誰も、

勝っていない。


だが。


もう、

 神の実験ではなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る