第22話 〈設計者〉が想定外の結果に気づく

――自由は、従わないとは限らない


〈設計者〉は、

焚き火を数えていた。


非王派。

王派。

どちらにも属さない火。


そして――

〈共感者〉の場所。


「……増えてる」

小さく、

呟く。


〈共感者〉の周囲には、

誰も命令していないのに

人が集まり始めていた。


指示もない。

演説もない。


ただ、

一緒にいる。


「おかしいな」

〈設計者〉は、

地図を見直す。


計画ではこうだ。


王の秩序が揺らぐ

非王派が拡大する

王派が硬直する

混乱の中で、主導権を奪う


だが、

今起きているのは違う。


王派は、

壊れていない。


非王派も、

暴走していない。


そして〈共感者〉は、

旗を掲げていない。


〈設計者〉は、

違和感の正体に

ゆっくり辿り着く。


「……選ばせすぎたか」

王は、

〈共感者〉を排除しなかった。


それどころか、

拒否を許可した。


その結果。

秩序は、

二つに分かれなかった。


**“選択できる秩序”**として

進化してしまった。


〈設計者〉は、

歯を噛みしめる。

「王……

 そこまで考えてたのか?」


〈調停者〉が、

焚き火のそばで

静かに座っている。


殴られた跡は、

まだ残っている。


だが、

誰も彼を避けない。


同情も、

英雄視もない。


ただの一人の人間として

そこにいる。


それを見た瞬間、

〈設計者〉は

本当に気づいてしまう。


――檻は壊れた。

――だが、

  王は檻を

  “檻だと認めた”。


それは、

最悪のケースだった。

「これ……

 革命じゃない」


誰も、

奪っていない。

誰も、

倒していない。


正しさが、

 更新されただけだ。


〈観測者〉の記録。

想定外事象発生

王の秩序、

崩壊せず

「選択可能な秩序」へ遷移

設計者の

影響力:相対的低下


〈設計者〉は、

拳を握る。


「……負けた、

 とは言えないな」


だが、

勝ってもいない。


〈共感者〉の笑顔が、

遠くで見える。

疲れている。


でも、

迷っていない。

〈設計者〉は、

初めて思う。


この人、

 俺の計算の外で

 勝つ気だ。


「……やばいな」


それは、

称賛だった。


〈設計者〉は、

戦略を捨てない。


だが、

一つだけ修正する。

“勝者になる”

 予定を、消す。


代わりに、

選ぶ。


“物語の外に立つ”

 という役割を。


夜。


〈設計者〉は、

誰にも見られず

島の端に立つ。

「さて」

「次は、

 何が壊れる?」


神は、

何も言わない。


だが、

確実に言えることがある。

この戦争は、


 もう

 頭のいい人間だけの

 ものじゃない。

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