第21話 〈共感者〉が王に直接対峙する
――それでも、あなたは優しいままですか
夜だった。
焚き火の数が、
島の勢力を示している。
非王派の火は大きい。
王派の火は整っている。
どちらも、
正しい。
〈共感者〉は、
一人で歩いた。
止める者はいない。
守る者も、
ついてこない。
それ自体が、
すでに選択だった。
〈王〉は、
座っていた。
剣も、
威圧もない。
ただ、
待っていた。
「来ると思っていた」
それが、
最初の言葉だった。
〈共感者〉は、
一礼もしない。
だが、
敵意もない。
「〈調停者〉が殴られました」
確認するように言う。
〈王〉は、
頷く。
「聞いている」
「止めなかった」
「命令しなかった」
「でも、
守らなかった」
〈王〉は、
言い訳をしない。
「秩序は、
例外を嫌う」
静かな声。
〈共感者〉は、
一歩前に出る。
「それでも、
あなたは優しい」
その言葉に、
〈王〉の指が
わずかに止まる。
「否定しません」
〈共感者〉は続ける。
「あなたは、
多くを救った」
「あなたの秩序がなければ、
もっと死んでた」
〈王〉は、
黙って聞く。
「だからこそ」
〈共感者〉は、
視線を逸らさない。
「私は、
あなたを止めに来た」
夜風が、
二人の間を通る。
〈王〉は、
ゆっくり聞く。
「……何をもって?」
〈共感者〉は、
即答する。
「私自身を」
その言葉に、
初めて
〈王〉の表情が
揺れた。
「あなたは、
私を守った」
「発言を奪い」
「危険から遠ざけ」
「正しさの外に
出さなかった」
「それは、
慈悲だった」
一拍。
「でも」
〈共感者〉は、
胸に手を当てる。
「私は、
その中で
誰も救えなかった」
〈王〉は、
初めて反論する。
「救えなくても、
生きている」
〈共感者〉は、
頷く。
「はい」
「だから、
ここに来ました」
「守られている限り、
私は
あなたの正しさを
証明する道具になる」
「それは、
優しさじゃない」
〈王〉は、
しばらく沈黙する。
「……なら、
何を望む」
〈共感者〉は、
答える。
「選択を」
「あなたが、
私を守るのか」
「それとも」
「私が、
あなたに
従わないことを
許すのか」
二つは、
両立しない。
〈王〉は、
理解してしまった。
これは、
反逆ではない。
拒否権だ。
〈王〉は、
立ち上がる。
「君が外に出れば、
死ぬ可能性がある」
「知っています」
「秩序は、
壊れる」
「もう、
壊れています」
その一言で、
勝負は決まった。
〈王〉は、
目を閉じる。
長い。
そして、
言った。
「……行け」
それは、
命令ではない。
許可だった。
〈観測者〉の記録。
王、
共感者への保護を解除
秩序の一部、
自壊を許容
支配フェーズ:動揺
〈共感者〉は、
一礼する。
「ありがとう」
〈王〉は、
小さく笑う。
「優しさを、
憎ませてしまったな」
〈共感者〉は、
振り返らずに言う。
「いいえ」
「優しさを、
選ばせてくれました」
その夜。
〈共感者〉は、
どの焚き火にも
属さなかった。
だが、
誰もが知った。
王の秩序は、
初めて
拒否されても
成立してしまった。
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