第19話 〈設計者〉が檻を壊すための犠牲を選ぶ
――誰かが、守られなくなる必要があった
〈設計者〉は、
夜の地図を見ていた。
島の形。
焚き火の位置。
人の動線。
そして、
〈共感者〉の“檻”。
王の保護は、
完璧だった。
配置。
善意。
物語。
誰も悪くならない。
だから、
壊れない。
「……一人、
落とすしかないか」
独り言は、
静かだった。
犠牲の条件は、
三つ。
王派に属している
善人である
守られている理由が、
“象徴”になる
〈設計者〉の脳裏に、
一人の顔が浮かぶ。
〈調停者〉。
王派の中で、
最も人を宥め、
最も王を信じ、
最も「誰も傷つけない」
役割の男。
彼が守られている限り、
王の秩序は
“正しさ”を失わない。
〈設計者〉は、
彼を嫌っていなかった。
むしろ、
尊敬していた。
「だから、
選ぶ」
翌朝。
〈設計者〉は、
〈調停者〉に声をかける。
「話、
しない?」
〈調停者〉は、
笑顔で頷く。
「いいよ」
疑わない。
二人は、
焚き火から少し離れる。
見張りは、
ついてこない。
彼は、
“危険人物”じゃない。
〈設計者〉は、
歩きながら言う。
「王のやり方、
どう思う?」
〈調停者〉は、
即答する。
「正しいと思う」
「でも」
〈設計者〉は、
続ける。
「君が倒れたら?」
〈調停者〉は、
少し考える。
「……守られる、
と思う」
〈設計者〉は、
首を振る。
「守られない」
その言葉が、
初めて彼を刺した。
「君は、
“守る側”だから」
「象徴だから」
「君が壊れたら、
物語が崩れる」
〈調停者〉は、
理解してしまう。
顔色が、
変わる。
「……じゃあ、
どうするんだ」
〈設計者〉は、
視線を逸らさない。
「君に、
選んでもらう」
風が、
吹く。
「王の下に残って、
象徴でい続けるか」
「それとも」
一拍置く。
「“守られなかった人”に
なってくれるか」
〈調停者〉は、
笑う。
苦笑だ。
「それ、
死ねってこと?」
〈設計者〉は、
首を横に振る。
「生きろ」
「ただし」
「守られずに」
沈黙。
長い。
〈調停者〉は、
空を見る。
「……君、
最低だな」
〈設計者〉は、
否定しない。
「うん」
〈調停者〉は、
しばらくして、
言う。
「俺が外れたら、
王は?」
「揺らぐ」
「〈共感者〉は?」
「動ける」
また、
沈黙。
〈調停者〉は、
小さく頷く。
「わかった」
その一言で、
犠牲は決まった。
〈観測者〉の記録。
設計者、
意図的に
王派の象徴を
保護圏外へ誘導
檻破壊フェーズ、
開始
その夜。
〈調停者〉は、
王派の焚き火に
戻らなかった。
朝。
彼は、
非王派の側にいた。
守りは、
つかない。
誰かが、
囁く。
「……あの人、
大丈夫なの?」
その問いが、
すでに
檻のヒビだった。
〈設計者〉は、
遠くで思う。
自由は、
血じゃなく、
“見捨てられる姿”で
成立する。
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