第17話 王が〈共感者〉を危険人物として認識する

――優しさは、従わない


〈王〉は、

怒っていなかった。


怒りは、

感情だ。


彼が感じていたのは、

評価の更新だった。


報告は、

簡潔だった。


「〈共感者〉が、

 王派の前で発言」

「否定はしていません」

「ただ……」

〈王〉は、

続きを促す。


「“理解できるから、許さない”と」

その一文で、

すべてが繋がった。


〈王〉は、

少しだけ目を伏せる。

――ああ。

――このタイプか。


〈王〉は、

〈共感者〉を

ずっと“安全な存在”として

扱ってきた。


争わない。

煽らない。

暴力を嫌う。

管理不要の人間。


だが、

今は違う。

〈王〉は、

独り言のように言う。


「彼女は……

 従わない優しさだ」

側近が、

戸惑う。


「処分、

 考えますか?」

〈王〉は、

即答しない。


「排除は、

 簡単だ」

「だが、

 彼女は“正しい”」

その言葉に、

空気が固まる。


〈王〉は、

続ける。

「正しい人間を消すと、

 秩序は腐る」

「それを、

 皆が知ってしまう」

王は、

彼女の発言を思い返す。


否定していない。

怒鳴ってもいない。

ただ、線を引いた。


――理解できる。

――だから、許さない。

それは、

王の支配構造の外にある言語。


〈王〉は、

初めて戦略図を書き換える。

危険人物の定義を、

更新する。


危険人物・旧

・暴れる

・命令に逆らう

・力を持つ


危険人物・新

・理解した上で、従わない

・否定せず、孤立させる

・感情ではなく、結論で動く


「彼女は、

 敵じゃない」

〈王〉は、

はっきり言う。


「だが、

 この島で一番

 “秩序を壊せる”」

側近が、

息を呑む。


「どう……

 対処しますか?」

〈王〉は、

しばらく黙る。


そして、

静かに言った。

「守る」


誰も、

意味を理解できない。

「彼女を

 “守る存在”にする」

「守られる側は、

 噛みつけない」

それは、

処刑より残酷な策。


保護という名の隔離。

〈王〉は、

決めた。


・直接手は出さない

・発言の場を与えない

・誰かの代表にしない

・だが、危険からは守る

優しさで、

牙を抜く。


〈観測者〉の記録。

王、

共感者を

危険度Aに再分類

対応方針:排除ではなく保護

目的:影響力の遮断


〈共感者〉は、

まだ知らない。

自分が、

最も王らしいやり方で

管理され始めたことを。


そして〈設計者〉は、

その動きに気づき、

小さく笑った。


「……来たな」

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