第15話 非王派が初めて血を流す回
――守られないという現実
血は、
あっけなかった。
悲鳴も、
宣戦布告もない。
ただ、
「起きた」。
それだけだった。
最初に倒れたのは、
〈非王派〉の中でも
一番穏やかな男だった。
争いを避け、
調停役に回り、
誰の悪口も言わなかった。
だからこそ、
狙われた。
朝。
非王派の焚き火が、
まだ完全に消えきっていない時間。
彼は、
水を汲みに行っていた。
一人で。
背後から、
鈍い衝撃。
刃物ではない。
殺す気もない。
黙らせるための暴力。
地面に倒れた瞬間、
理解した。
――ああ。
――守られてないんだ。
〈王派〉の二人組は、
無言だった。
命令は、
出ていない。
だが、
“空気”はあった。
「こいつら、
まだ分かってない」
誰かが言った。
それが、
引き金だった。
拳が、
腹に入る。
鈍い音。
肋骨が、
折れる感触。
血が、
口から溢れる。
殺さない。
だが、
助けもしない。
それが、
新しいルール。
焚き火の方で、
異変に気づいた〈共感者〉が走る。
「やめて!」
声は、
震えていた。
〈王派〉の一人が、
彼女を見る。
「命令?」
その一言で、
彼女は止まった。
――違う。
――命令じゃない。
〈共感者〉は、
理解してしまう。
守られない側は、
止める権利もない。
倒れている男は、
もう声を出せない。
血で、
土が黒くなる。
〈設計者〉は、
少し離れた場所で見ていた。
止められた。
理屈も、
策も、
用意していた。
だが――
止めたら、
王派に「介入理由」を与える。
――これが、
王の作った世界か。
暴力は、
数分で終わった。
〈王派〉は、
何事もなかったように戻る。
非王派に残されたのは、
・倒れた仲間
・血
・沈黙
・そして
自己責任という言葉
〈観測者〉の記録。
非王派、初の流血事案発生。
命令系統なし。
だが抑止力も存在せず。
結果:事実上の放置。
〈共感者〉は、
血を拭きながら、
泣かなかった。
泣いたら、
負けだと思った。
だが、
手は止まらない。
倒れた男が、
小さく言う。
「……王のとこ、
行けばよかったな」
それが、
一番残酷だった。
〈設計者〉の胸が、
初めて痛んだ。
計算通りだ。
だが、
計算通りすぎた。
その夜。
非王派の焚き火は、
小さくなった。
誰も、
大きな声で話さない。
〈王〉の側では、
報告が上がる。
〈王〉は、
一言だけ言った。
「……そうか」
それ以上、
何も言わない。
その沈黙が、
許可だった。
神は、
空から見ていた。
まだ、
戦争ではない。
だが、
もう平和でもない。
初めて流れた血は、
必ず次を呼ぶ。
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