第14話 〈王〉が“選択を迫る演説”をする
――選ばせるという暴力
〈王〉は、
全員を集めた。
強制ではない。
だが、誰も来ないという選択肢はない。
それ自体が、
もう命令だった。
「最近、
判断が遅れている」
〈王〉は、
淡々と言った。
責める口調ではない。
事実の共有だ。
「迷いが増えた。
これは、悪いことじゃない」
何人かが、
少し安心した表情を浮かべる。
それを見て、
〈設計者〉は悟る。
――来る。
「だが」
一語で、
空気が締まる。
「迷いが増えたまま、
決断だけが必要になる状況が来たら」
〈王〉は、
一人一人を見る。
「その時、
誰が責任を取る?」
誰も答えない。
〈王〉は、
否定しない。
「だから、
選択してほしい」
その言葉は、
提案の形をしている。
だが中身は、
完全な排除だった。
「私の判断を、
信じて任せる者」
〈王〉は、
片側を指す。
「そして」
反対側を見る。
「自分で判断したい者」
空間が、
二つに割られる。
誰も、動かない。
〈共感者〉の胸が、
強く痛んだ。
――まただ。
――また、
選ばされる。
「どちらが正しいかは、
問題じゃない」
〈王〉は続ける。
「問題なのは、
混ざったままでは
誰も守れないことだ」
それは、
完全に正論だった。
だから、
誰も反論できない。
「今、
ここで決めよう」
〈王〉は言う。
「私に判断を委ねるか。
それとも、
自分で全てを背負うか」
それは、
自由意思という名の処刑台だった。
最初に動いたのは、
王派の“強固層”だった。
迷いのない足取りで、
〈王〉の側に立つ。
――生き残るための、
最適解。
次に、
数人が、同じ側に続く。
遅れた者ほど、
視線が低い。
自分を納得させるために。
だが、
全員ではない。
動けない者たちが、
残る。
不安層。
共感者。
観測者。
そして――
〈設計者〉。
〈王〉は、
残った者たちを見る。
失望はない。
ただ、
覚悟の確認。
「……分かった」
そう言って、
頷いた。
「君たちは、
自分で判断する側だ」
〈王〉は、
その言葉を
優しく言った。
「私は、
干渉しない」
それは、
保護の放棄だった。
その瞬間、
島は、二つに割れた。
秩序の中にいる者。
秩序の外に立つ者。
どちらが安全かは、
明白だ。
〈観測者〉の記録。
集団分離を確認。
強制ではないが、
選択しない自由は存在しなかった。
結果:事実上の派閥分断。
〈設計者〉は、
内心で頷く。
――よし。
王は、
自分で線を引いた。
もう、
戻れない。
〈共感者〉は、
立ち尽くしていた。
どちらも、
選びたくなかった。
だが、
選ばなかったことで、
すでに選んでしまっている。
〈王〉は、
最後に言った。
「私は、
私の側に立つ者を、
最後まで守る」
それは、
誓いであり、
宣戦布告だった。
夜。
焚き火が、
二つに分かれて燃えている。
距離は、
数十メートル。
だが、
もう戻れないほど遠い。
神は、
空からそれを見ていた。
人間は、
選択を与えられると、
必ず争う。
だが今回は、
少し違う。
誰も、自分が悪だと思っていない。
それが、
一番、美しかった。
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